上諏訪の郷愁風景

長野県諏訪市<宿場町・城下町> 地図 
 
町並度 5 非俗化度 7 −旧甲州街道沿いに看板建築群の連なる独特の町並−


諏訪一丁目の町並 看板建築・洋風建築が多く見られる


 諏訪地方の中心で温泉地としても知られる諏訪市。もとは上諏訪と呼ばれ、甲州街道の宿駅が置かれていたほか、城下町としても発達した。市役所近くには復元された天守閣が石垣に囲まれて威容を示している。この高島城は諏訪湖の湖水を濠とし、浮城と呼ばれる特色あるもので、甲州街道を取り込んで城下町を造成した。
 また温泉地としても知られ、湖岸には多くのホテルや旅館が営業し、温泉街を形成している。 
 上諏訪宿は上町・中町・本町の三町で構成され、本陣1軒を具備し、14軒の旅籠を有していた。近くには諏訪大社上社もあることから門前町的な位置づけもあり、町場は賑わった。また良質の湧水に恵まれたことから酒造業が盛んに行われた。
 明治以降、国鉄中央本線の開通に伴い温泉客が急増、諏訪湖や霧ケ峰などの観光拠点ともなり、以後製糸業の発達、戦後には精密機械工業も多く立地して現在に通じる町の発達をみている。
 町並としての一番の特徴は旧甲州街道の道筋である国道沿いに見られる。現在は交通量も多く旧街道といった雰囲気は感じられない。しかも大正末期に大火に見舞われ、宿場町や城下町時代の遺構は残っていない。しかし両側には洋風の外観をした建物が目立ち、胸壁を二階部に立ち上げた看板建築も多く見られる。それらの比率は高く、また長く連なっており他ではほとんど見ることの出来ない独特の町並景観となっている。これらは大火の復興として耐火性の高い洋風建築・看板建築が採用されたことによる。看板建築は関東大震災後の東京とその周辺で採用されたものといわれているが、比較的全国各地に見られ、この上諏訪も時期が近く、また災害復興という共通の目的もあり東京の例に従って建てられたものなのだろう。




諏訪二丁目の造り酒屋


 町は旧甲州街道沿いの洋風建築・看板建築の価値を見出されているようで、現在の姿も修景が行われているもののようだ。以前の姿は目にしていないが、変に繕ったような色はなく建物の素材としての魅力も十分感じることのできる町並景観となっている。ただ一軒取壊されると全体の景観が随分影響が出てしまうものだ。出来るだけ現状の姿を無理なく留めるよう、努力を続けていただきたいものである。







訪問日:2018.09.24 TOP 町並INDEX