上多気の郷愁風景

三重県美杉村【宿場町】 地図 〈津市〉
 町並度 6 非俗化度 7  −伊勢本街道の宿場町 豪壮な商家の姿も見られる−


 上多気地区は津市と松阪市の境で伊勢湾に注ぐ雲出川の上流域にあり、近隣の多気町とは異なり「たげ」と発音する。古くは上多芸とも表記されていたという。
上多気(町家)の町並




上多気(町家)の町並


 


上多気(谷町)の町並




上多気(谷町)の町並
 


 小盆地に位置し、国道368号線の旧道といった1車線の細道にそい古い町並が残っていた。その姿はなかなか重厚なものであり、こんな山間部にあって意外というイメージを抱く。
 街村の形をとるこの町並は、旧伊勢本街道の宿場町の名残である。小さな支流の合流するところにあり、その支流に沿い南の丹生俣方面から北へ向かい、松阪に出る脇街道との交差点に当たる要衝であった。
 紀州藩主の参勤交代時の通行のほか、伊勢参りの旅客を多く受け入れ、江戸後期がもっとも栄えていた頃であった。明治に入っても伊勢参りの客がこの街道を利用し、20軒ほどの宿屋があったというが、その後の鉄道開通などで町はその役割を終えた。明治2年の記録では92軒の家屋、371人の人口を有していた。
 中心を国道・河川に分断されており、町並の様相はそれを境にやや異なる。南側は谷町と呼ばれ、塀を巡らした広大な敷地の旧家、虫籠窓の見られる町家、土蔵などが見られ豪勢な出で立ちで、山林地主や商売を興し成功した家が含まれどちらかというと商家町に近いエリアである。北側のやや小高いところにある一帯は町家と呼ばれ、ここでは比較的間口が狭い家屋が軒を接して展開する形となる。宿場町としてはこちら側が中心だったのだろう。
 今に至るまでその名残があるということは、過疎化がそれほど激しくこの地に及ばなかったことと、住民の意識が高かったこともあるのだろう。町のあちこちに案内板が立てられ、訪れるものの歴史的認識を深めてくれる。

 
 
訪問日:2013.08.14 TOP 町並INDEX