上蔦木の郷愁風景

長野県富士見町【宿場町】 地図
 町並度 5 非俗化度 8 −国境に位置する甲州街道の宿駅−







上蔦木の町並
 

 国道20号線は甲信国境で釜無川を跨ぎ、その名も国界橋と呼ばれている。信州側は八ヶ岳の裾野の末端に位置していて、なだらかな斜面となっている。この上蔦木地区はそのようなところに設けられていた旧甲州街道の宿駅だ。
 旧宿場町はそのまま国道20号線となっている。往時の面影のある建物が比較的残っており、当時からこの幅が確保されていたものと思われる。平入り・トタン葺の比較的小規模な町家が多かったが一部には一段高く入母屋の屋根を持っている旧家もあった。印象的だったのが各家に掲げられていた屋号で、木製の札に書かれたそれらの呼称は宿場町時代の賑わいを想起させ、車が通過するだけの殺風景な町並に歩く楽しさを与えてくれる。
 現役時には旅籠10軒ほどに本陣もあり、また若干の商店もあった。町の東側で釜無川を橋で渡っていたが、不通の際には小淵沢村から渋沢村へと旅人は迂回し、また人馬継立てが行われた。
 明治に入ると、蔦木宿は宿駅制度が廃止されまた鉄道が宿駅から離れた所に建設されたことから衰退した。今残る建物が見たところ江戸に遡るものは少ないながらも、古い町並景観を連ねているのは、明治以降もしばらくは近隣の中心であり、街道の拠点であったからだろう。
 間口が狭い割に奥行の深い鰻の寝床状の家々は、裏道に廻るとまた独特の町並景観を展開させている。街道に面した主屋、裏手に中庭があり、一部には離れや別室などもある。そして各戸に共通しているのは裏通りに面して土蔵を構えていることだ。申し合わせをして土蔵を裏手に並べたわけでもなかろうし、むろん保存活動がおこなわれるでもなく「適度」に板壁や漆喰が剥がれ風情をかもし出している。この土蔵風景も蔦木宿を象徴するものと思えた。
 








甲州街道の裏手には土蔵の連なる町並も残っていた

訪問日:2009.01.02 TOP 町並INDEX