上矢作の郷愁風景

岐阜県上矢作町【在郷町】 地図 <恵那市>
 
町並度 4 非俗化度 10 −矢作川水系上流域の小さな商業町
 






上矢作の町並


 上矢作町は県の南東端、矢作川の支流・上村川に沿い小さな市街地が開ける。
 江戸時代は上村と呼ばれ、庄屋1人、組頭・百姓代などの村方三役、その下に五人組という役職を置いて村の秩序を保っていた。ほぼ山林で占められている村域では耕地に乏しく、村の生活は厳しいものがあったといわれ、農民はその多くが貢物として接収されてしまう米の他に、雑穀を栽培し生活を維持していた。それでも農間余業として草鞋や草履などのわら細工、養蚕や機織を行う者があり、さらに酒や味噌の醸造、紺屋や鍛冶屋、大工なども現れ、流域の小さな商業町となっていたようだ。
 またこの地域は中山道沿道や、足助を経て伊那に至る伊那街道からも大きく外れた位置にあるものの、間接的ながら恩恵は受けていたようである。中でも伊那街道で盛んに行われた中馬には当地の村民も参加し、馬稼ぎにより現金収入を得るものも少なくなかった。この街道から岩村、明知、瀬戸などを通って名古屋方面を結ぶ往還もあったことから特に江戸後期になると物資の往来も少なくなかったと思われる。
 在郷商業町としては大きく発展はしなかったとはいえ、上村川右岸に街村的に展開する旧市街地からは商家風の建物も見られ、古い町並を残していた。土蔵を従え、端正な格子が程度良く残されている風景もあった。また一方で、閉店しているとはいえ個人経営型の小さな百貨店が見られるなど、昭和までは零細ながらも商業の中心性が保たれていたように感じる。
 矢作川水系の最上流部で、現在の道路網からは通過点にもなりにくい位置である。
 





訪問日:2017.07.17 TOP 町並INDEX