神山の郷愁風景

徳島県神山町<産業町> 地図
町並度 4 非俗化度 7 −鮎喰川上流域 名西山分と呼ばれる地域の中心−












神山(神領)の町並


 神山町は鮎喰川の上流域を占める町である。この川は吉野川の下流部に合流するものの、中上流域では吉野川流域とは急峻な山地で隔てられており、明治頃までは徳島方面とを結ぶ陸路は狭隘な駄馬道のみであったという。物の移送は専ら川を上下する曳船で行われた。県内の内陸部は吉野川流域に平野部が展開するほかは峻険な山岳地帯を幾条かの谷間が東西に走り、それぞれで独自の流通・交通が行われていた。
 この鮎喰川上流域は古くから山分と呼ばれていたように、他の地域とは隔絶された独自の地域として認識されていたようだ。
 村民の生活は雑穀や芋を中心とした自給的農業を行う細々としたものであったが、18世紀以降になると藍作が行われるようになる。この地域の藍は山藍と呼ばれ、吉野川流域の藍作地域にも珍重された。また銅山の開発、明治に入ると養蚕業が盛んになり、それらの産業によって発達していった。また鮎喰川を遡り峠を越える道筋は剣山への近道でもあり、霊山参りの往来によっても多少賑わっていた。
 鮎喰川右岸の台地状の地形に町並が展開している。旧神領村の中心市街地で、一定の商店が見られ、また旅館など地区の拠点らしい街の姿であった。所々に伝統的な平入り切妻の建物があり、古い町並といえる佇まいを見せている。今では普通の住居となっているものでも多くは1階部が開放的な造りになっており、かつては商店だったのだろう。
 そんな中に町家建築を利用したカフェが眼についた。最近オープンしたらしく若い人がオーナーのようである。この町は近年移住者が多く、企業の進出も目立つなど山間の町の割としては珍しく、ひそかに注目されているという。確かに歩いていても比較的活気が感じられた。
 建物や町並への関心の高まりへとつながることを願いたいものだ。
 

訪問日:2017.12.02 TOP 町並INDEX