金石・大野の郷愁風景

金沢市金石町・大野町<港町> 地図(金石)地図(大野)
 町並度 5 非俗化度 8  −金沢城下の外港−

         






金石の町並

 

 金沢市の西郊、日本海に面する金石・大野地区は犀川河口付近にあり、金沢城下の港として栄えたところだ。海商銭屋五兵衛は、両替商・呉服商から転向後ここを拠点として大坂を初め出羽・蝦夷地との交易を重ねた。
 加賀地方の海岸線は砂丘地帯で、入江に囲まれた良港は少なく河口港が大半を占める。そのため大型の船を持つ素地がなく、西廻り航路が発達してからも大坂回米を運んだのはほとんど他国の船だったという。その中で銭五は、質流れの中古船から自らの商業努力で徐々に船を増やし、藩の御用金徴収役に任命されるほどになったといわれる。
 金石は古くは宮腰港と呼ばれ、藩の物資の大半はここに集積され各地に帆送された。安政3(1856)年に隣の大野村が町に昇格したことから入港権を巡り紛争が起ったことから、加賀藩は合併を持って和解させようとし、「金石之交」の諺をとって金石と改名したそうである。幕末には銭五のほかに千五百石積から百五十石積までの七艘の船を所有していた輪島屋与三兵衛など北前船主が数多く居を構えていた。
 金石の現在の町並には、かつての廻船問屋を思わせる塀に囲まれた大柄な屋敷型邸宅も見られるが、全体としては漁師町的な佇まいで、新しい建物に混って妻面を板張りとした家屋が連なっている。一階には伝統的な格子が残る旧家も少なからず見られ、二階部には古い様式のガラス窓がはまっている。一部には袖壁を纏った家も見られた。
 金石の東側、犀川河口に面する大野町も同様な町並が見られる。ここは当時から商業、特に醤油醸造業が発展したようで、今でも古い姿のまま営業している姿を見ることができた。 近年このエリアでは銭屋五兵衛記念館、大野町の醤油蔵を利用したギャラリー等も開設され注目されている。家並も金沢市の「こまちなみ保存区域」に指定されており、今後も古い港町らしい姿を伝えていくことが期待される。
   



大野の町並
訪問日:2003.11.03
2013.05.04再取材
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