長町の郷愁風景

金沢市長町【武家町】 地図
 
町並度 6 非俗化度 2 −繁華街に接する位置に残る貴重な武家町−

 




長屋門と土塀が連なる長町の町並
 

 長町は金沢を訪れた観光客の訪問先としては兼六園と双璧をなしているところである。時に団体客の姿も眼にする。
 金沢の城下町は城のある台地を中心として、それを取り巻く形で発達した。浅野川と犀川を天然の濠のごとく利用し、大規模な町場を形成していた。前田氏は関ヶ原の戦いにより功を得て、加賀藩は119万石もの超大藩となり越中や越前をも支配するところとなった。そのため城下町も広大で、各地に重臣の屋敷地が配置されていた。さながら小藩が分立していたようで、小型の江戸幕府といってもよいものであった。
 武家屋敷も随所に配置されたが、現在も趣を濃く残すのはこの長町界隈のみである。武家町が状態よく残っている例は少なく、土塀の一部のみが現存する程度がほとんどであるが、ここでは連続性も保たれ、また長屋門の厳かな構えも旧態を留めている。しかもこの長町は下級武士が中心に住まう地区であったそうで、繁華街に程近いところにあることからも良くぞ残ったというべきであろう。他藩では、下級武士は長屋に住むことが多かったようだが、ここでは独立した邸が与えられていたそうだ。
 小路に土塀が連なる風景が象徴的な眺めである。金沢城下町は度々大火に遭遇してきたが、この長町は江戸期を通じて一度も火災が発生していないとのことで、それだけに原型に近い町割や建築物が今に残されているのだろう。
 訪ねたのは冬の時期で、土塀は菰がけされており独特の風情をかもし出していた。また犀川から引き込まれた用水がこの旧武家地に巡り、風景にアクセントを添えているのはひときわ趣深いものがある。
 
 









訪問日:2011.01.01 TOP 町並INDEX