西茶屋街の郷愁風景

金沢市野町他【花街】 地図
町並度 6 非俗化度 5 −小規模ながら濃密な料亭街が残る−





野町二丁目(西茶屋街)の町並


 金沢市街地には江戸時代に発する3つの遊興地が現存している。浅野川を挟んだ東町、主計町の茶屋街とこの西茶屋街である。この西茶屋街は犀川の南側に展開し、他の二箇所に比べると市街中心からはやゝ外れた位置にある。北国街道が近くを通り、町の拡大に伴い犀川を越えたこの付近も町場化され江戸後期には大層な賑わいを見せた。西茶屋街は西の廓と呼ばれ、犀川から連なる繁華な地域の一角にあって、他の二箇所と比べ庶民の茶屋街として繁栄していたという。


旧西検番事務所


 かつては上町・下町とあったようだが下町の方は早期に衰退し、原型を留めていない。しかし現在の姿は、芸妓数は他の二箇所を凌駕し、最も賑わいを呈している。東茶屋街のように保存地区には指定されていないものの、建物は端正な外観を保ち、また良く整備され洗練された古い町並を構成し、高い連続性を保っている。
 京都祇園と共通する点も多いが、二階部分が暖簾ではなく木製の雨戸となっている点が異なる。降雪も多く寒気も強いため、閉鎖構造にする必要があったのだろうが、そのことで木質感が高く、厳かさを強く感じることが出来る。
 南端に残る洋風建築は西検番事務所。大正期に建てられ、茶屋街の管理事務所のほか、芸妓の稽古場としても使用されていたという。町並の歴史性が感じられる建物である。
 近くには北陸鉄道の野町駅があり、南郊外の各地とを結んでいる。この鉄道で茶屋街を訪ねた客も多くあったに違いない。

訪問日:2011.01.01 TOP 町並INDEX