寺町・野町の郷愁風景

金沢市野町他【寺町】 地図 
 
町並度 5 非俗化度 7  −北国街道沿いに寺院を固め発達した町−

寺町五丁目の町並 木造三階建の旅館建築が異彩を放っている


 旧金沢城の小高い丘を中心として展開する金沢市街地、その南の犀川を隔てた位置に野町・寺町地区がある。市の南郊外とを結ぶ北陸鉄道の起点駅もこの野町に設けられており、地理的にも中心市街地の南縁、郊外との結節点にあたる位置にある。
寺町三丁目の町並※




寺院の連続する寺町五丁目付近※
 

 
 町の中心を旧北国街道が縦断している。町場は古くから開けていたが、周囲は何にも利用されない荒蕪地であり、その状態は藩政期に入ってもしばらく続いていた。野町という町名は一面の原野であったことに由来している。また所々に泉が湧き出していたとされており、そのため泉野とも呼ばれていた。北国街道に沿い南西に隣接する町には現在でも泉の地名が残っている。
 また一国一城令の施行を機に、散在していた寺院群を北側の卯辰山裾とこの野町付近の二箇所に移設し固めた。これは城下を守護する防衛拠点として計画されたものだろう。泉野寺町と呼ばれ、今でも地区内には約50もの寺院が存在しまさに寺町といったたたずまいである。特に寺町五丁目付近の街路筋には大型の寺院が固まっており、町並ならぬ寺並ともいうべき風景が展開している。
 江戸末期の安政年間には本町の一部に数えられ、城下町に準じる扱いを受けていたといわれ、犀川を渡った町の中心部に近く人通りが多かったため賑っていた。
 国道157号線ともなっている幹線道路の犀川大橋の南袂から東に枝道に入ると、まず大きく目立つ木造三階建ての旅館建築がある。山錦楼と呼ばれる料亭旅館で、もとは二階建ての町家だったそうだが、増改築して今の姿となった。それにしても当時の付近の賑わいを証明するような伝統的建築だ。付近にも幾つか町家建築が見られ、南に行くにつれて増えていく寺院の佇まいとともに、趣ある町並風景を演出していた。
 市街地の中でも観光客の訪れが少ない地区であり、隠れた趣を感じることの出来るところといえよう。 




野町一丁目の町並


 


泉一丁目の町並

※印の画像は再訪時の撮影
訪問日:2011.01.01
2015.06.14再取材
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