蒲原の郷愁風景

静岡県蒲原町宿場町 地図 <静岡市清水区>
 町並度 5 非俗化度 6  −東海道15番目の宿駅−



 蒲原と聞くと広重の名画を思い浮かべられる方も多いと思う。夜の雪景を表現した浮世絵は東海道五三次名所図会の中でも特に有名で海外からの評価も高い。この付近は雪の少ない地域であり、一部では越後の蒲原を表現したものではないかとの憶測も交わされているが、どうであれ名作であることには変りない。
旧蒲原宿の町並
 
 平安時代に刊行されたという有名な「和名抄」にも蒲原郷の名が駿河国廬原郡六ヶ郷の一つに数えられており、歴史が大変古いことがわかる。東海道に面しているだけでなく富士川の河口近くに位置し、海に接してもいたため集落が発達する要素に満ちていた。鎌倉期頃から製塩業を中心とした産業も盛んとなり、町場が形成されていた。
 江戸期に宿駅制度が発布されると本陣及び脇本陣が整備され、50軒近くの旅籠を擁する宿場となり、大名行列などの大規模かつ重要な通行を受入れている。富士川が洪水や増水などによって渡れない時などはここが仮の泊地となり、そうしたことでも蒲原宿は繁栄した。
 旧蒲原宿付近では旧道がそのまま残っており、比較的往時の町並が残されていた。区域の西部で東西方向から南北方向へと直角に折れ曲り、見通しの遮断が図られているのも重要な宿場町らしい街路形態だ。家々は基本的に平入りの切妻屋根の建物が連続する都市型町家の姿であった。それらは二階部分が出桁調になった東国風のつくりを示しており、1階部分の原型を保った町家では出格子や蔀戸などが具備され、一部は二階正面に木製の手摺を備えた旧家もあった。また、海鼠壁に縁取られた塗屋造りの建物や洋風建築が散見されるのも、長い時期にわたって賑わいが続いていたことを証明しているようであった。
 決定的な見応え度はそれほどではないものの、旧宿場町らしく線的にまとまり全体像のつかみやすい町並である。
 
 












蒲原の典型的な町家 原型を良く保っている

訪問日:2009.01.13 TOP 町並INDEX