室本町の郷愁風景

香川県観音寺市【産業町・港町】 地図 
 
町並度 5 非俗化度 9 −室本麹の名で知られる麹の名産地−
 


 






室本町の町並

 
 室本町は観音寺の市街中心部から北に3kmほど、銭型の砂絵で知られる琴弾公園を過ぎ、小さな入江を囲むところにある。
 古くは室本浦と呼ばれ港が発達した。江戸期は丸亀藩領で村高は211石余り、重要航行時に徴用される加子に指定された家も9軒あったという。貢納物などもここから積出されて、それに伴って商業活動も盛んになった。
 この地は讃岐でも最初に稲作が始められたところといわれ米の生産量が多かったことから、元禄元(1558)年に雨霧城主・香川之景より麹の製造・販売がが許可された。以後麹屋が急増、それらを取り仕切る麹座もつくられた。麹は酒や醤油などの醸造や、発酵食品にとって欠かせない材料であり、長らく専売制をとっていた。江戸期も丸亀藩に保護されたこともあり一層生産販売量が増加し、室本麹の名で各地に知れ渡っていた。現在も軒数は少なくなったとはいえ現役の麹屋があり、麹を使った甘酒なども親しまれている。
 港から面的に連なる町並は、南側の一本道がメイン道路らしく寺院も散見される。家々は伝統的な建物が連続するといったほどではないが、格子の美しい旧家、本瓦や海鼠壁などの意匠が見られ、狭い範囲ながらも古い町並を残していた。また港に面する一角には、土蔵が多く見られた。船での積出しに備えて麹を貯蔵するためのものだったのだろうか。いずれも倉庫などとして現在も使われている様子であった。
 町並の雰囲気は港町・漁村というよりは商業町的な色彩が強く、やはり麹の製造販売を中心に発達した町なのだろう。港は現在は近代的に整備されてマリーナなども見られた。


 
港付近の土蔵群

訪問日:2017.08.13 TOP 町並INDEX