軽米の郷愁風景

岩手県軽米町【宿場町・産業町】 地図 
 町並度 3 非俗化度 9  −九戸街道の宿場町 製鉄業でも栄えた−

 軽米町は県北端部の内陸の町である。八戸市街地に流れ下る新井田川上流域にあたり、支流を合せる小盆地に市街地が展開する。幹線鉄道沿いからは外れたが、八戸自動車道が通り、交通の便は良い。






 江戸期には盛岡藩から分れた八戸藩領で、九戸郡軽米通に属した。軽米には代官所が置かれ地域を管轄した。
 八戸街道から分岐する九戸街道はこの軽米を通り、伊保内(九戸)を経由し岩手郡の葛巻に達していた。脇街道ではあったが八戸と領内の各村、沿岸部との物流に利用されてきた街道で、軽米には宿駅が設置された。ここから沿岸の久慈に向かう浜街道も分岐していたことから町場が栄え、在郷町としても賑わったという。
 南から七つの町が町立てされ、仲町・大町には商家が並んだ。毎月2・12・22日が市日と定められ、その都度近郷から人が集まったという。その伝統は今でも続いており、訪ねた時ちょうど2日であったこともありあちこちで衣類や食料品等が露天市で売られている風景を眼にした。
 農業はしばしば冷害に見舞われる土地柄のため稲作は発達せず、畑作中心であったが、一帯で採取された砂鉄がそれを補完した。製鉄業が興り、鉄山経営で財を築くものもあった。鍋や釜、農具のほか寺の釣鐘等も鋳造し、鉄製品で年貢を納めることもできたという。
 市街中心部は周囲の農山村の風情からすると意外に思えるほどの賑わいを感じた。街路が複数回直角に屈曲しながら商店が連なっており、宿場町・在郷町であった頃の形を伝えている。但し建物は多くが更新されており、古い町並としては余りそれを感じ取ることができない。しかし一部では昔ながらのせがい造りの商家の形が見られ、また看板建築風の建物が多いのも特徴的であった。また、旅館の看板のある建物が比較的多いのも印象的であった。
 街道沿いから少し外れたところに旧町役場の木造建築を利用した軽米町立図書館がある。そのそばには立派な土蔵が並ぶ風景もあり、商産業で潤った町であることを示しているようであった。










訪問日:2018.05.02 TOP 町並INDEX