小房町界隈の郷愁風景

奈良県橿原市<商業都市> 地図
 
町並度 6 非俗化度 8  −大和盆地の古街道に沿い連なるかつての商業町−






南八木町二丁目の町並




 橿原市の八木町周辺には古い町並が至る所に残っている。市街地より飛鳥川を挟んでは重要伝統的建造物群保存地区に指定された今井町、近鉄大和八木駅東方の八木町・北八木町界隈、そして今回ここで紹介するのがその街路の延長線上といえる南八木町・小房町界隈である。
小房町の町並




小房町の町並
 

 町並はJR桜井線の畝傍駅東にある踏切の南側から直ちに始まっており、乗用車の離合も容易でないほどの細道に沿い町家が高い割合で連なっている。多くでは中二階の古い形式が守られ、出格子や袖壁、虫籠窓など奈良盆地の古い家屋の特徴が見られる。中には床几を構えた旧家もあった。一方で本瓦葺の屋根は余り見られないようであった。
 線路を挟んで北側の八木町と成因は同じく、奈良盆地を南北に貫く中街道に沿い商業が発達した町らしい。江戸の昔より周囲で盛んに栽培された綿花を得て織物業が盛んに行われ、その後明治時代に入ると、呉服商である安田合資会社、丸屋合資会社、そして38年には県下初となる近代的な織物工場である藤岡織布合資会社と立続けに大型工場が立地した。
 駅に近いところにはあるものの、市街地とは逆方向であり、また幹線道路筋からも外れたわかり難い位置にあるため、古い町並のあるこの旧街道筋には地元の方々しか足を踏み入れそうに無いし、また家々を保存しようという動きも全く感じられない。これは近くに今井町があることも影響しているだろうが、奈良県全体の傾向として史蹟や寺社など他に文化財が多数あるために、古い町並があっても観光客や地元の方々が認識し、注目される度合が少ないからだろう。しかし現実にこの小房町界隈は保存活動を行うに十分匹敵する古い町並を有している。
 横道を少し入ったところにある真言宗観音寺は通称小房観音と呼ばれ、花の寺として有名で私が訪ねた時も薔薇の鉢植えで境内が埋められ、また涼味を感じさせる風鈴も下がりちらほらと訪ねる客があった。茶房などもあり町並探索の傍ら寄ってみるのも良かろう。




小房町の町並


訪問日:2008.07.21 TOP 町並INDEX