太平寺・安堂の郷愁風景

大阪府柏原市<産業町> 地図 
 
町並度 6 非俗化度 8  −明治以降ブドウ栽培で発展した−

 

 

太平寺二丁目の町並 右は「カタシモワイナリー」 


 柏原市太平寺及び安堂地区は市街中心の東側を占め、近鉄大阪線の東側の区域である。安堂地区の南西を大和川が西流する。
 地区の中心に石神社があり、格式を感じる雰囲気の境内には圧倒的な存在感を示す大木がある。この楠の木は府指定の天然記念物となっている。この辺りを境に北側が太平寺地区、南側が安堂地区となる。
 この地区を特徴づけるものとしてブドウの栽培がある。元々この一帯では江戸期より綿花の栽培が盛んに行われ商品作物となっていたが、明治以降はそれに代わるものとしてブドウが栽培され始めた。集落の後背地は緩やかな丘陵で日当りと水はけが良い土地でブドウ栽培に適し、技術の向上とともに急速に規模が拡大した。昭和10年には大阪府が全国一の作付面積を有し、中でも太平寺・安堂地区を含む堅下村がその30%を占めていた。ワインなどへの加工も盛んに行われ、ブドウの産地として広く知られるところとなった。
 太平寺地区はそれらを背景に、古い町並風景を従えていた。多くが車一台が通れるかどうかという細い路地で、入り母屋の屋根を持ち厳かな塀に囲われた邸宅、本瓦葺の土蔵など、見られる建物の質も高い。この大柄な建物群は江戸期に遡るものではなく、明治以降にブドウ栽培により富を得た邸宅の可能性が高い。一角には「堅下ワイナリー」という建物があり、大正3年創業以来ワインの醸造販売を続ける西日本で最も古いワイナリーである。
 坂道を上り家並が疎らになりはじめると、建物の間からブドウ畑が見渡せる。
 
 

 

太平寺二丁目の町並 
 

 石神社から反対側に回った安堂地区にも伝統的な建物が散見され、長屋門を構える農家建築などがあり、やはり背後にはブドウ畑が広がっていた。太平寺地区と同様な経過を辿ってきたところなのだろう。両地区を通じて、現在でもかなりの規模の栽培が行われている事がわかる。
 


安堂の町並 
 

 

 安堂の町並 


訪問日:2023.06.02 TOP 町並INDEX