樫原の郷愁風景

京都市西京区<宿場町> 地図 
 町並度 6 非俗化度 8 −都市部に隣接する地区に稀有な連続性を残す旧山陰道の町並−


 樫原(かたぎはら)地区は京都市街地の西縁、西山の麓にある。旧山陰街道(丹波街道)は七条通の西端の丹波口より発し、樫原は丹波の入口といえるところに位置している。

樫原下ノ町の町並


樫原宿旧本陣の建物 樫原下ノ町の町並


 
貞享2(1685)年の記録に「樫原 七条通の西、丹波にこゆる道なり」との記述があり、18世紀半ばには宿場町の体裁を整えていたといわれている。
 丹波や但馬の諸大名の参勤交代時にも利用されたが、大名行列が京都の市中を通過することは許されていなかった。そのため一行はここから
遠回りして伏見を経由し、山科から大津に抜けていた。また丹波方面から大坂へ向う場合も、ここから物集女(モヅメ)街道を南下し山崎から西国街道を南下していた。そのような交通の結節点であったことから本陣も構えられ、また丹波地方の物資の集結する所となり、さらに各方面に売り捌かれていった。
 町並は市街地に接する位置にあるのに伝統的建物の高い連続性が保たれており、保存に値する古い町並といえよう。切妻平入りの町家建築が中心であることは洛中と大きな違いはないが、間口が広いことと、街道から一歩控えた位置に玄関があることが特徴的に感じられる。土地に余裕がありまた農家出身の邸宅が多かったからかもしれない。西に向い緩やかな登りとなり、また所々で曲線を描く街道は家並風景共々、ニュータウンなどの規格化された街路筋とは対蹠的なものであり、温もりを感じさせるものである。
 そんな中に旧本陣の建物が現存している。煙抜きの越屋根や虫籠窓の姿にも威厳が感じられ、街道からは他の町家よりさらに一歩引いた位置に建てられている。街道集落とはいいながら、農村集落のような要素も家並から感じられる。
 京都市は重要伝統的建造物保存地区とは別に、樫原地区を独自に「界わい景観整備地区」に指定し、区域内に残る30余りの伝統的建物を界わい景観建物として特定している。




樫原宇治井西町の町並




樫原宇治井西町の町並 樫原宇治井町の町並


訪問日:2005.04.16 TOP 町並INDEX