第15号 (2017.06.24発行)

第15回いらかぐみ日奈久オフ会

2017年6月10・11日 開催場所:熊本県八代市日奈久温泉

       




 

 
今年で15回を迎えるいらかぐみオフ会。ここ数年は開催地の偏りを避ける目的もあり、回ごとに大まかな地域絞り込んでその中から決定することにしている。
 中国・四国以西が今回の候補地だが、15回目にして九州での開催がまだない。そのため九州を第一候補として、年明けから徐々にネットで話題を出してきた。しかし特に関東メンバーからすると飛行機の便はあるとはいえ遠方だ。議論が本格化するにつれ便利の良い博多周辺、さらにもう少し近い地域で開催したほうが良いのではとの意見も聞かれたが、今回はやはり「古い町並の残る」九州の町をというのが本命であることはメンバー共通の願望であったようで、熊本県の日奈久温泉での開催に落着いた。ここであれば新幹線の駅からも、遠方からの参加者は飛行機利用でも比較的不便さはない。
 宿泊は伝統性、予算などの面で「柳屋旅館」が選定された。



 


 「柳屋旅館」は「金波楼」と並び日奈久を代表する伝統的な温泉旅館であり、温泉街入口正面という一等地に構える。創業は明治22年、約130年の歴史を誇る。「金波楼」の方が一般には有名で、建物の見映えも良いのだが、歴史はこちらの方が古い。いかにも、いらかぐみオフ会に相応しい選択ではないか。
 今回は太泉八雲さんが仕事の都合で残念ながら不参加となったが、昨年メンバーに加入された辰巳屋さんがオフ会初参加となり、計7名での開催となった。

 


 




新旧棟の間にある洋風の応接間がアクセント 当日は我々の貸切状態だった 別棟にある浴室 シンプルながら肌触り良い湯が掛け流されていた






飾らないレトロ感にあふれる館内 細かな意匠までこだわり抜かれている 

 オフ会当日。メンバー各自がそれぞれ組んだ行程で徐々にメイン会場に接近しながら(予定が合うメンバーがあれば行程を調整しながらの同行で)宿に直接集合。これが例外なく続いた伝統的な集合法で、今回も同様となった。特に今回は全員にとって遠方での開催となり、アプローチも自家用車、新幹線、飛行機+レンタカー等と様々で、全員での動きは夕食及びその後の歓談、翌日の早朝探訪のみとなった。
 オフ会だから出来るだけ全員での行動、それが無理でも極力複数メンバーでの動きを多くしたいものだが、自家用車組以外の行動拠点だけでも新幹線駅、熊本空港、鹿児島空港などさまざまであったので、今回は仕方ないことだろう。
 16時に宿入りした私は先に離れにある浴場で入浴を済ませ、到着するメンバーに備える。とはいえこんな時間から宿の温泉に入るということ自体、優雅なものである。離れにある浴室棟に入ると、小さな浴槽が二つ、簡素ながらもレトロな雰囲気を残す浴室で、湯はかすかに塩の香りを含む優しい泉質であった。
 
 徐々にメンバーが到着し始める。早く到着したメンバーは、階段や廊下、そして各部屋に見られる凝った意匠に興味津々で、貸切状態を良いことに空き部屋に入り込んで床の間などをカメラに収めていた。我々にあてがわれた3つの客室内の間取り・細かな意匠もそれぞれに異なり、発見だらけの館内だった。もちろん宿の人には了解を頂いて(正確には、宿の方がもっと違う意匠がありますよ、と空き部屋に招じ入れていただいたのを機に、無遠慮にあちこちの部屋に出入りしたに過ぎないが・・)

 普段は古い町並や集落を訪ね歩き写真やスケッチに収めるのがメンバーの基本行動である一方、建物の内部はそれほど関心が向かない傾向があるようだ。ただ、この柳屋旅館、内部に関しては登録有形文化財の金波楼にも劣らないものが残されていた。




夕食会場の大広間は折上げ式の天井なども見られ厳かだった
 

 7名の参加者に車5台。これだけでも今回のオフ会の様子が伺えるものだが、とにかくそのようなことで三々五々と探訪し午後6時過ぎにはここに無事集結。 全員が入浴を済ませるのを待って少し遅れて夕食開始。会食場の大広間は折上げ式の天井、豪華な欄間の意匠が眼を引く。こういうところにこの温泉場を代表する旅館であることの誇りを感じるようだった。
 その後、場所を客室に移して歓談会。オフ会ではやはりこの時間が一番濃密なものとなる。今日の成果やこの1年の印象的だったことを出し合い、明日の個人行程をアドバイスしあう。話はいらかぐみ結成初期の頃の話にも遡り、懐かしいメンバーの名前も出た。
 私が持ち込んだ球磨焼酎(米焼酎)、uranoさんが求めた鹿児島の芋焼酎を片手に、気がつくと日付が変る頃だった。
 



歓談会に持ち込まれた酒類 やはり焼酎だろう




早朝散策のひとコマ


 翌日はもうすっかりオフ会の定番となった早朝の町歩きから始まる。予報どおりの雨の中、傘を差しての探訪。
 町を歩いていると少なからず眼にする空地。恐らくそこにも旅館があったのだろう。旅館の看板を掲げながら営業されていない様子の建物。足場が組まれ、修復中の旅館。
 雨もあってやや寂しい町並探訪の雰囲気となったが、時折みかける地元の方々の様子からは普段どおりの朝の生活が見える。共同浴場に洗面器をはじめ入浴セットを持って向う人。我々が旅館の裏手に目立つレンガ製の煙突について話していると、たまたま通りがかった人からそれは竈で調理していたころの厨房の煙突と教わった。
 町並としてのシンボルである、薩摩街道沿いの海鼠壁の建物。この界隈まで歩いて約1時間の散策を終えた。

 大広間での朝食の後、旅館そして各自負担分の精算そして全員での記念撮影を終え、オフ会の全体会部分は9時過ぎには解散となった。
 解散後、天候は回復し大きく晴れ間が広がった。
 梅雨の時期の開催、事前の予報も芳しくなく気がかりではあったが、結果的には早朝探索時以外はほぼ天候に恵まれたオフ会となった。
 



 
参加者にとっては、出発から個人的探訪を終えて帰宅するまでがまさにオフ会である。
 今回は先にも述べたように遠方での開催という事もあって、アプローチも様々であることで、日奈久温泉の全体会以外はほぼ参加者各人での行動となった。
 その分、各自の興味関心にしたがって訪ねた成果は多岐にわたり、その質量も相当なものになった。成果の詳細は各人のサイトに委ねることとして、ここではそのダイジェストを記す。


万訪さん・Yasukoさんは前後の基本行動が一緒だった。
奇しくも万訪さんは直前に福岡県への出張があり、9日に北九州市周辺を歩いた様子。事実上ここからオフ会が始まっていたようだ。10日にはYasukoさんと久留米・大牟田と筑後地方の町を巡った。テーマは近代化遺産と戦後の町並。11日は山鹿の遊里跡を散策後、再び福岡県に戻って田川市・直方市周辺を探訪。
七ちょめさんは熊本空港を拠点に、10日は阿蘇地方を探訪後日奈久へ。11日解散後は南に向い、人吉周辺を探訪後鹿児島県霧島温泉に向った。「旅籠宿に泊る」というここ数年のテーマとして、柳屋旅館とともに選択した「おりはし旅館」に宿泊。翌12日まで会期を延長し鹿児島県の麓集落、熊本県内の町並を追加で探訪し帰路についた。



Kさんは10日、真っ先に熊本城に向いスケッチ。現役時代九州に赴任されたこともあり、せめてもの応援の気持とのことで、その思いの強さが伝わってきた。
11日は日奈久でしばらく温泉街をスケッチ。その後福岡へ移動し中洲付近でスケッチした。聞けば九州を離れてから17年ぶりの福岡だそうで、「今浦島」状態だったとか。12日は終日、思い出深い佐賀県の唐津で過ごしたとのこと。


uranoさんは鹿児島空港拠点でのアプローチ。大隅半島から薩摩半島へとダイナミックに廻った。中でも加世田の町並に感銘を得たとのこと。
11日の解散後。秘境と呼ばれる五家荘に向うも、道路の通行止めで思わぬ事態に。しかし集落はひと通り廻ることができ、現在でも「秘境」の雰囲気を残す貴重な地区として心に刻まれた探訪であった。




今年がオフ会初参加となった辰巳屋さん。しかしお会いする前から九州地方はかなり詳しい様子で、今回私自身も参考にさせてもらった。
10日は直接日奈久入り。
11日解散後は長崎県方面に足を伸ばした。平戸島の捕鯨集落、料亭街などを訪ね、帰宅は14日と全員の中で最も長い会期を終えた。
そして孫右衛門。一足早く9日に出発した。県北部の山鹿の再訪からはじめ、当日は人吉盆地に南下し周囲の町を幾つか訪ね、登録文化財の宿・人吉旅館に宿泊。オフ会用の球磨焼酎を仕入れ、旅館の湯の前に激渋銭湯「新温泉」へ。これらはKさん情報で良い一晩を過ごさせてもらった。10日は鹿児島県出水周辺の麓集落などを訪ねた後日奈久へ。11日の解散後は、宇土半島を1周、その後海岸部を玉名市まで北上しながら町並を拾い歩き、そこから帰路についた。

 
 前後の個人的な動きの部分も含め、事故や大きなトラブルもなかったことは何よりの収穫で、安堵とともに終えることができた。

 一方で、定例オフ会は年に1度の開催なので、やはり今回のオフ会に関しては全員とはいわなくとも、なるべく多人数での行動の部分がもう少し多ければという思いが、今回の会を統括した者として少々心残りではある。

 次回は、順番から言うと東日本での開催。この件をひとつの申し送り事項として、オフ会記録の締めとしたい。


−孫右衛門 記−

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