第8号 (07.12.09発行)

鞆の現状
      
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 このかわら版で以前何度か、鞆の古い港や町並についての問題点に触れてきた。埋立て・架橋問題も時折新聞で取上げられているのを眼にするが、抜本的な解決には未だに至っておらず、行政と住民は平行線を辿り続けている。
 久々に鞆を訪ねてみて、港周辺や町並に大きな変化がなかったので安堵したものの、行政側は架橋計画の実現と古い町並の保存をセットと考え、地元に説得している。
 この写真のような美しい港の遺構が、埋立てられて陸地に埋没してもよいのだろうか。古い町並の存続もこのままでは数軒の代表的旧家以外は、将来取壊しまたは建替えという運命が待っていることだろう。道路計画もさることながら、港町の健全な保存は喫緊の課題である。
 今回鞆に在住のある方に、架橋問題について意見を伺うことが出来た。もっとも前もって取材を申込んだ訳でなく、偶然お話が出来た方であるので、断片的で訪ねたいことを全て聞き出すことはできず、通り一遍のやりとりだけに終始した。
 しかし、鞆の現状を少しでもお伝えすることが出来ると思い、その時撮影した港周辺の写真を添えてここに掲載しておきます。






・・・何年か振りに鞆を訪ねましたが、一見表向きは変っていないように感じます。しかし、古い家屋は一番最初に来た時に比べ、明らかに減っているように感じます。橋を架けるのと町並を保存するのがセットというのだから困ったものですね。
 「それは単なる口実に感じますね。橋を架けるという計画を頓挫させたくないがための脅しのようなものです」

・・・以前町並ゼミがここで開催された時知ったのですが、もう行政とのせめぎ合いが始まって、かなりになるらしいですね。私がこの問題を知ったのはほんの10年前くらいでしたが。
「24年間です。去年一回計画が白紙になったのです。でもまた再燃している。前の市長さんは町を度々訪ねて、住民の意見もよく聞いて貰えたのですが、今の市長はそれも全く無い。地元の住民も不安感が増していますね」
・・・私は全国広範囲に古い町並をある程度見てきましたが、やはり鞆ほど今後の姿が注目されている町はないと感じています。
「やはり港としてこれだけ形が残っているのは他にないと思いますよ、私も新潟の保存地区
(佐渡島の小木町宿根木)やその他幾つか港町を見てきましたけど、やはり家並みだけでなく構造としての港が残っているのが大きいのです」
・・・雁木や焚場などですね。
「そうです。それらは生きた港だから価値があるものなのに、港を埋めて陸に埋もれてしまうと、単なる史蹟になってしまいます」
・・・住民の方からも海が遠のきますね。
「本当ですよ。実際私のところ
(ご自宅)は後がすぐ港なのですが、埋立てられると海風が入らなくなり、夏場は3度は気温が上がるでしょうね。景色だけでなく生活そのものも変ってくる」









・・・こんな平行線の状態がいつまで続くのかわかりませんが、このままでは風化してしまう運命に晒されている事が心配ですね。
「絶対埋立は反対です。誇りにしているものが台無しに、恥さらしのようなものになってしまう。今月(2007年12月)に再び裁判が行われます」
・・・私が一番心配しているのは、もし万が一架橋されてしまった場合、駐車場も整備されると聞いていますので大型の団体がどんどん町を訪ねだし、町も観光地のように土産物屋が建ちならぶことです。
「そんなことはないでしょう。単なる通過点になりますよ。実際和歌山の方
(新和歌浦)でも新しい橋が架かって、昔からあった店が全部無くなって、観光客もさっぱりになったそうですよ。ここも橋がかけられても、橋から港をみるだけで、町並の中には入ってこない、かえって古い町は寂れると思いますね」

・・・有難うございました。
※取材日:2007年12月2日

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