上総一ノ宮の郷愁風景

千葉県一宮町【在郷町・漁村】 地図 
 
町並度 4 非俗化度 7   −九十九里平野南端の商業町・漁村−




 一宮町は外房地区の九十九里平野の南端に位置し、横須賀・総武線からの直通快速がここで折り返しとなるなど、首都圏の外縁にあたるところといえよう。
一宮の町並 代表的な寿屋本家の店蔵


 九十九里平野の主な町は内陸に市街中心が開けているのが多いが、この一宮は比較的海岸に近いところにある。江戸時代には漁業が盛んで、特に鰯の地引網漁業は干鰯や〆粕(肥料)として幕府の保護助成を受け、17世紀後半から17世紀はじめには既に全盛期を迎えていた。
 一方慶長11(1606)年より始まった六斎市は、茂原をはじめ5ヶ村持ち回りで開かれ、一宮村では5と10の日に開かれた。一宮では干鰯や鮮魚と山間部の物資、日用品などが盛んに取引され、在郷商業町的な発達を見た。
 また上総国一宮であった玉前神社の門前町としての役割も持ち、小規模ながら宿場街も存在していたという。町は複数の機能を持ち、海にも近いことから東上総の物流交易の拠点となったところである。
 上総一ノ宮駅の西側、国道128号線に沿いその面影が見られる。最も眼を引くのは2階部の漆喰壁、間口の広い堂々とした店蔵が印象的な寿屋本家だ。鰹節を取扱う問屋として発展した旧家で、中庭や土蔵も残り一部は改装の上食事どころとしても利用されている。この街路沿いには他にも寄棟のどっしりした構えの商家などが見られ、また玉前神社の鳥居前付近にも店蔵をはじめとした建物が残っている。
 このように質的に高い伝統的建物が複数残っているが、古い町並としての連続性が今ひとつであるのが惜しまれるところである。寿屋本家は町のランドマークとしてNPO法人による保存活動が行われている。そのようなところから古い建物を大事にする意識が高まり、数少なくなったそれらを活かす方向の動きが生れることを願いたい。









訪問日:2016.04.30 TOP 町並INDEX