警固屋・的場の郷愁風景

広島県呉市<住宅地> 地図 
 町並度 4 非俗化度 10 −工業地帯に接する斜面上住宅地−





警固屋三丁目の町並 造り酒屋などが見られる



 呉市街地から音戸方面に向けて海岸一帯には大規模な工業地帯が展開しており、それが途切れる辺りから音戸瀬戸を望む付近にかけては警固屋地区と呼ばれている。
 室町期から見える地名で、もともとは警固屋氏という海賊衆の一つでもあった。江戸期以降は半農半漁の村として醸造業などの産業も発達したところである。
 江戸期から明治中期にかけては警固屋村という独立した自治体で、その後昭和に入って山手に位置する的場町が分立した。的場町は呉海軍工廠に近いことから後発的に住宅地となった地区で、斜面上に路地が交錯している。軍都としての人口急増期、住宅需要に対して宅地に適した平地が圧倒的に少なく、市街地の辺縁部には随所に急峻な土地を宅地利用している風景が目立つ。
 警固屋地区はバスの通るメインの通りの両側に商店が並び、小さいながら中心市街地を形成している。海側の一角にはやや大柄の商家風の建物も見られ、営業は止められているようだが造り酒屋や醤油醸造家の姿もあった。
 一方山手に足を向けると斜面に家並が駆け上がるように展開している姿が見え、次第に細い路地も目立ってくる。それらに沿っては石垣、石積など斜面を克服するための努力の跡が見られ、集落景観としても特徴を感じる。多くは軍需による人口増加を受けて大体同じ時期に建てられたらしく、似通った構造の家屋が目立つようが、そんな中でも間口の広い立派な二階屋や土蔵を従えた御宅などもあった。路地を巡っていると、不意に煉瓦塀が現れたり、建物の個性的な意匠が眼に付いたりと探訪的にも興味深いものがある。
 ところで、以前から疑問に思っていたのはこの地区の屋根の色である。ほぼ茶褐色に統一されており、特に少し離れた所から見ると異様な感じも抱く。古い建物だけではなく、比較的最近に建てられたと思われる家々も同様だ。地区の統一事項で景観配慮なのかとも思っていたが、聞くところによると近くにある製鋼所からの鉄粉の影響なのだという。ある意味公害ともいえるが、現在は廃炉となっており、今後景観に変化が出て来るのか、注目しておきたいものである。




 警固屋三丁目から的場二丁目を望む






 
 的場二丁目の町並
 



 
 的場三丁目の町並
   
   
訪問日:2022.11.03 TOP 町並INDEX