紀伊長島の郷愁風景

三重県紀伊長島町 【漁村】 地図  <紀北町>
町並度 5 非俗化度 7 −東紀州最北端の漁師町−


 紀伊長島は志摩半島の基部南側を占め、太平洋に面する町だ。古くからの町は紀勢本線の駅からはやや離れており、赤羽川の河口を挟んだ1km余り南にある。
 入組んだ海岸線が連続する地形にあって集落が展開するに十分な平地があるのは、河口の土砂の堆積かあるいは埋立てによる造成か。予想外ともいえる広い市街地が形成されている。
 造成ではないかと思わせるのは町割が整然としているからで、細かい路地を除いては碁盤目状に整備されている。それぞれの小路ごとに町名が付されていたらしく、旧町名を記した小さな板が辻々に貼付されていた。














 古くより純粋な漁村で、江戸期には約100隻の漁船を有していたという。主な漁獲は伊勢エビであったが、他に鯖や鯵、鰹、秋刀魚なども多く水揚されていた。
 また熊野へ通じる往還の枢要地でもあり、人々や物資の交流もあって商業も立地していたようだ。町中の主要な街路に沿って間口の広い町家建築が散見されるのは、そうした商家だったと思われる。
 多くの小路では密集した家並で、所々に袖壁を持った伝統的な構えの家屋が挟まっている。但しそれほど古くないものが多いようで、またそれらの多くが漁家に由来するらしい外観のお宅である。木製欄干を持つ家が眼につくのは、船宿の意匠を模倣したものと思われた。
 海岸沿いには地元の小さな活魚店が幾つか営業され、干物を作る光景など漁師町らしい風景が見られた。

訪問日:2010.10.10 TOP 町並INDEX