明石の郷愁風景

広島県木江町【港町】 地図 <大崎上島町>
 町並度 4 非俗化度 10 −かつては廻船業でも栄えた港町−
 






明石の町並


 竹原市の南に位置する大崎上島の南端付近に展開する明石地区。旅客船も発着できる立派な港が整備され、背後に集落の広がりが見える。
 古くからの港町で、江戸初期の「芸藩通志」によれば1000人余りの人口を擁し58隻の船を所有していた。幕末頃から廻船業が盛んになり、その数は更に急増したという。明治に入ると近代交通、物流上の拠点港ともなり、本州四国間の諸船の多くが寄港した。周囲で盛んだった甘藷や蜜柑、煙草もここから盛んに積み出された。
 大崎上島は本土側からの橋がなく、本州側からは竹原または安芸津港からの船によるしかない。また大きな観光地もないため、比較的外来者の来訪が少ない状態が保たれている。同じく南岸沿いにある木江には、遊興街を彷彿させるような町並や、木造多層階建ての家屋などもあることから多少探訪客があると思われるが、この明石集落にはほぼ皆無だろう。しかし歩いてみると、主に明治以降に港町として繁栄した痕跡が伺える。
 伝統的建物が連続的に残っているわけではないが、門を持ち、塀を巡らせた豪商型の邸宅が散見される。これらは廻船業を営んでいた裕福な家々だったのだろうか。一部には二階に木製の欄干を巡らせた旧家もある。それらから受けるのは零細な漁村といったイメージではない。
 人口減少時代の折、これらの立派な家屋も持主を失い、歴史の残影を無くすのかもしれないが、現在はまだそれが十分に感じられる。




 
 
訪問日:2016.0103 TOP 町並INDEX