吉良川の郷愁風景

高知県室戸市<商業町> 地図
 
町並度 8 非俗化度 5  −土佐特有の水切瓦が見事に残る貴重な町並−






御田八幡宮に向う緩やかな坂 水切瓦が連続した特徴ある町並である 現在唯一備長炭を作りつづけている細木家 土蔵が喫茶店として開放されている
 
 


 室戸岬に程近い高知県南東部、太平洋に対峙して吉良川の町並が展開する。海辺でありながら漁港に適した入江を持たぬこの町は、漁村よりも在郷商業町として発展していた。江戸時代より木材の集散地であったところであり、明治期にはそれを使用した木炭の生産業が興り、海路にて関西方面と取引を行った。近隣で多く自生している「ウバメガシ」という暖帯性の低木が木炭に加工するに適していたことも発展の一因だろう。
 現在見られる家々はその時期の建立の物が多く、古い町並としては比較的新しいものではある。しかし、その外観は、非常に特徴のあるものである。
 この町の代表的町並景観は海沿いの国道55線の一本山側の旧道沿いに見られる。土佐の町々に多く見られる水切瓦であるが、当所はその軒数、密度も他に比類無き多さで現存し、重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。特に印象的なのは、国道沿いの町並駐車場より旧道に入ってすぐに眼に入ってくる松本家住宅、御田八幡宮の参道入口に位置している細木家住宅であろう。叉、武井家住宅は、まちなみ館として一般公開され、地元の老婦人から丁寧に説明応対して頂ける。当所によく見られる建築形式は、多くは厨子二階であるが、玄関部分を吹抜けにし、その二階部分に風通し窓を設け、夏の日中の海風、夜の陸風を通し凌ぎやすくする工夫が凝らされている。水切瓦と共に、土佐の厳しい気候に適合させた見事な意匠である。
 気候との適合という面では、台風の直撃を受けやすいこの地、風対策も必須だ。土佐漆喰の厚塗りで固めるのもその一法だが、この商家の佇まいより古くから居を構えていた農民達にも、その工夫は見られる。山手の路地には、石垣を張り巡らした住居が目立つ。当地産の丸石、平石を積重ね、空積のものもあるが練積が多く、それが家々を防御するように設置されている。いしぐろと言われるこの石積は、この町並のもう一つの顔といえる。
 なお、観光客の姿はそれほど多くなく、また観光客の応対をする施設も地味で町並と一体となっている。古い蔵を喫茶店として利用している旧家もあった。










町並館として公開される武井家住宅 側面に煉瓦を施したものも一部で見られる 水切瓦のある風景




御田八幡宮付近にはこのような石垣集落が続いている 芸術品とも言える見事な石積だ

※2007年8月再訪問時撮影(★印:2002年4月撮影)


訪問日:2002.04.28
(2007.08.15再取材)
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