積川の郷愁風景

大阪府岸和田市<農村集落> 地図 
 
町並度 5 非俗化度 9  −裏小路のようなところに濃密に展開する町並−

 

 

 

 

水路の巡る小路に沿い長屋門や土蔵が見られる積川の町並 


 積川地区は市域の東部、和泉市寄りの内陸部にあり、周囲は田園と住宅地が交錯するも、近くには阪和自動車道や国道バイパスが通過し周辺環境は都市郊外的な様相を示している。この地域は和泉山脈から流れ出る川が多くの谷を刻んでおり、この積川地区は牛滝川の流域となっている。上流部からの物資の流れもあり、賑わいを見せた所である。
 集落内の積川神社は正応2年の『和泉国神名帳』には「正一位積川社前」とあり、地位が高い社であった。天正13年豊臣秀吉により社領を没収されて以降は衰退したものの、現在もその姿は格式を感じさせる。
 昔ながらの集落の中心は神社から見ると北西側、府道40号の西側に平行する街路に沿い展開する。一見神社の門前町的な雰囲気も感じるが実際は違うようだ。かつて主要道だったとされるこの街路は車の通行も困難なほどの細道で、現在では裏道のような恰好となっている。
 土壁の連なる箇所、長屋門、土蔵が建ち並ぶ風景、街路沿いには思わぬ古い町並が残されていた。近くの川から引き込まれているのか、水の流れがずっと沿っていることで一層風情を高めているように感じる。屋敷内に濃い緑が見られる邸宅もあり、周囲とは別世界のような感触を抱く。
 この細道を辿らない限り、古い町並の存在に気付くことはない。取って置きの珠玉の町並といいたいところであるが、一部にはバリケードが配置され更地になっている箇所もあった。大きな造り酒屋があるとの情報だったが取壊されたか。他の建物も傷みの目立つものがあり、気がかりな状況である。
 場所柄建物を保存するといった動きが起るとは思い難く、今後徐々に伝統的な建物が失われ、町並の濃度も淡くなっていくものと思われる。せめてもと記録しておきたい。

 
  
 

 

 

 

積川神社 
   

訪問日:2022.11.20 TOP 町並INDEX