木曾福島の郷愁風景

長野県木曽福島町【宿場町 地図 <木曾町>
 
町並度 6 非俗化度 5 −中山道沿いと木曽川沿い 異なる二つの町並風景−
 





福島宿当時の家並が残る上の段の町並


 木曽福島は長野県木曽地方の中心として官公庁も集まり、小さいながらも市街地をなしている。しかし平地はほとんどなく、木曽川の深い谷沿いに開けるため、非常に細長く展開している。
 木曽地方は畿内や名古屋から信濃への最短ルートにあたっていることは、今も昔も変り無い。かつての徒歩行の時代は、この急峻な谷に沿い中山道が走り、ここには福島宿が設けられていた。その後往来の主役は国鉄中央本線や国道19号線に譲っているが、今なお中山道時代の面影も色濃くこの木曽福島には残っている。
 とはいえ旧宿場町の多くが道路として使われ、商店街として新しく装われた佇まいとなっている。新しいといっても宿駅時代と比べてと言うだけで、古びた洋風看板建築やビル建築、旅館も見られる。これを町は昭和の町並として位置付け訪問客に売り出しているが、今ひとつ個性に乏しい気がしないでもない。
 いやしかしこの町は、裏側が十分個性的なのである。街路の川岸は建物を建てるのに余りにスペース不足で、苦肉のアイデアとして独特の崖家造りが生れたのだろう。通りからは建物の二階に出入りする造りとなっていて、1階部は文字通り川沿いの崖に張出し、木材や石材などで支保されている。従って街路方向からは二階建てに見えても、木曽川から見上げると実際多くが三階建てとなっている。
 この崖家造りの風景が展開する付近から川沿いを離れ少し丘の上に登ると、上の段という中山道の古い町並が程度よく残っている一角がある。残念ながら旧福島宿の姿を留めるのはこのわずか100m足らずの区間だけである。しかし短いながらも古い町並の風情は濃密だ。当時から旅人の咽喉を潤したであろう水場からは滔々と豊かな清水が湧き出し、木質感高い平入りの家並は木曽の山々を借景に非常に絵になる。この区間が高台にあるうえに鍵の手があるなど折れ曲っていることから偶然家並が残ったのだろう。
 福島宿は重要な宿場で、ここには関所が設けられていた。幕府の設けた四大関所の内の一つで(他は東海道箱根・新居、中山道碓氷)、特に警戒されたのは入鉄砲と出女といわれ、出女とは大名家族の女性が江戸を出ることを指し、幕府のスパイのような行動をすることを恐れ、厳しく取締っていたのだそうだ。
 上の段付近は福島宿でも一番外れにあたる付近で、本陣などが存在していた宿場町の中心は商店街化された川沿いの平地区間にあった。ここは旧国道19号線であろうが、上の段の家並からして、国道が当初から中山道を踏襲しなかったら見応えのある古い町並がここに存在しただろうと連想しながら町を後にした。
 




 木曽川沿いには迫力ある崖家造りが展開していた

訪問日:2008.06.08 TOP 町並INDEX