清水寺門前の郷愁風景

京都市東山区<門前町> 地図
 
町並度 7 非俗化度 0 −京都を代表する清水寺参道の町並−
 



二年坂の町並 二年坂の町並




二年坂の町並 三年(産寧)坂の町並




三年(産寧)坂の町並 三年(産寧)坂の町並
 

 清水寺とその門前地区は京都市内でも最も訪問客の多い地区であろう。地名辞典では「江戸時代以降、松原通の東端、清水寺参道の一帯に展開した町地」と定義され、東山の山裾にある寺に向け数多くの参道が辿り、早くから町場化された地区である。
 町はほとんどが茶屋街であり、江戸初期の「元禄覚書」によると茶屋の数106件と記され、これは祇園町の71件をも上回っている。
 清水門前の最も古い参詣道は松原通より真東に伸びる清水道で、清水坂とも呼ばれる。この道はさらに山科から東海道に抜ける道としても大いに利用されたようだ。その後宝永年間(18世紀はじめ)にその南側に五条坂の名が見え、さらにその後の史料に「三年坂」が登場している。宝暦12(1762)の「京町鑑」に「さんねん坂。此坂大同三年に開けし故三年坂とぞ。又一説に泰産寺へ出る坂なるゆへ産寧坂といふ也」と記される。
 この坂道は、清水道と五条坂が交差する地点から北側に分岐している。一旦平坦になり、左にカーブを描く箇所から再び石段の坂道が北に向かい、高台寺の門前に達している。これは二年坂と呼ばれる。いずれも重要伝統的建造物保存地区に指定されている。
 現在、清水寺を訪ねる団体客は五条坂が表参道となっているため、北から入るこの坂道は彼らの訪れは少ない。しかしそれでも京都を代表する観光地であるため、常に散策客で溢れる一帯である。ここに掲載した写真は午前8時台に撮影したもので、落着いた雰囲気の清水門前本来の姿を味わうことが出来た。もっとも現代においては、観光客で一杯の状況が本来の姿と言えるかもしれない。
 三年坂では一部は江戸末期の建築と思われる、中2階で2階部に虫籠窓のある町家が幾つか眼につく。但し他の地方のように漆喰に塗り回されたものではなく、土壁の虫籠窓である。これは京都の特徴といえる。さらに明治以降の総2階建築も多い。それらは土産物屋などとなっている例も多く、観光地的な色合いが濃く感じられるが、その色を極力押える努力が強く感じられる。二階に掛けられた簾や格子などの意匠も洗練された実に京都らしい風情のある一角である。
 一方、二年坂は主に大正以後の建築が多いそうだが、石段の途中から坂を見下ろすと、小規模な茶店などが軒を並べ、絵になる町並風景であった。
 画像としては重伝建地区であるこの三年坂・二年坂だけを掲載したが、それ以外にも五条坂の南、清水焼の店が並ぶ茶碗坂や、祇園の八坂神社から辿る道など数多くの参詣路があり、それぞれ個性的で情緒に満ちている。清水寺の行き帰りには違った道順をとるのが面白かろうし、どちらかにはこの三年・二年坂を選ぶことをお勧めしたい。
 



訪問日:2005.01.03 TOP 町並INDEX