玉水町界隈の郷愁風景

高知市玉水町他【花町】 地図 
町並度 3 非俗化度 7 −明治になって計画的に造られた花街−

 


 
 




水路沿いに展開する玉水町の旅館群



 高知の中心市街地の西側、播磨屋橋の交差点から約2kmほどのところに位置する玉水町の界隈は、市街地を横断する土佐電気鉄道の線路と鏡川の間にあり、落着いた住宅地と商業地が混在した地区となっている。
 かつて付近は高知城下の西端に位置していて、城下への出入口として思案橋番所が置かれていた。伊予へ通じる街道が横断していたこともあり人々の往来も多く、賑わいのある界隈であった。また街道に沿って水路が延び、玉水と呼ばれた。城下町時代から生活や産業に用いられてきた水である。
 明治に入ると、玉水新地と呼ばれる花柳街となり、それまでとは異なった賑わいを呈することとなった。城下にあった置屋がここに集められ、土佐一の料亭とよばれた陽暉楼もこの付近にあった。花街としての賑わいはその後も続き、戦後の一時期には500名もの遊女を抱えていたと云われる。
 玉水町のメイン道路は電車通りの一本南、付近にはスーパーなどもあり出入りする車をはじめ通行量が多い。特徴的なのは道路の北側の一段低い位置にもう一本細道が並行していることだ。水路沿いに展開するこの道こそが遊興街・旅館街の中心で、現在でも旅館名を記した看板を持つ建物が幾つかある。或るものは妻入りで立派な瓦屋根を持ち、また他のものは長屋風の建屋を有している。端正な門を持ち、格子が残されているものもあった。
 この手の町は一般的な古い町並と違って人々の関心を引きやすいのか、探訪記が結構見られる。しかし歩いてみると、それらのサイトなどで紹介される姿と比べ随分面影が淡くなっているように感じた。それは建物群の前の樹木が繁茂して、家々が見え辛くなったことも影響していると思われるが、夜の町として今も現役なのかは、日中ざっと歩いただけでは判らなかった。
 東に足を進め上町に入ると開けた感じになり、道路の中心に水路が流れるこちらも特徴的な街路風景が展開していた。この付近に思案橋の番所があり、付近は水利を得て城下の町工場的な役割を示していたという。




 


上町五丁目の町並 


訪問日:2022.09.25 TOP 町並INDEX