湯村温泉の郷愁風景

甲府市湯村<温泉町> 地図
 
町並度 3 非俗化度 5 −昭和初期から急速に発達した温泉街−




 湯村温泉というと西日本の人間からすると兵庫県にある温泉場を連想するが、甲府の郊外にも同名の温泉地が展開する。周囲には寺社も多く、それらの門前町的役割も果している。


 
 






昭和の温泉旅館が散見される湯村温泉の町並 前衛には繁華街が展開する
 古くは湯島と呼ばれており、温泉自体は弘法大師が諸国行脚の途中にこの地で土地の人に温泉の湧き出す箇所を教えたことが始まりともされるなど、かなり古い歴史を持ち、徳川家康も入湯したともされている。しかし当時は現在の温泉街とは離れた山腹に湯槽3ヶ所があるだけで、客は米等を持参し自炊する形であった。
 17世紀半ばの正保年間には湯村と改称されたが、温泉街としてにぎわうことはなく静かな湯の里という雰囲気であったが、太宰治や井伏鱒二をはじめ文人の逗留も多く、知名度はあったようだ。全盛期は昭和10年代に入り現在の温泉街付近で温泉の掘削に成功してからで、同12年に掛けて旅館が続々と建設された。甲府の市街地に近い位置にあったからか、遊興色の濃い温泉場となり、置屋や芸妓も置かれ賑わったという。
 戦後になって甲府の東に位置する石和温泉が発展して以降は、やや賑わいを失っている。
 温泉街の南側は甲府市街地から連なる商業地が続き、その境は曖昧になっている。しかし県道の温泉街への案内標識に従って北に向かうと、なるほど古い町並的というほどではないが昭和的な温泉旅館が数棟目に入り、その手前に繁華街が展開していた。屋根付きの橋を渡って入る廃スナックの姿などもあり、一時遊興の地であったというのも納得が出来る風景である。
 日帰り入浴を受け付けている旅館もあり、日中も一定の温泉客の姿が見られた。
 


右は歴史ある旅館の一つ・杖温泉弘法湯 本館新館は渡り廊下で結ばれる

訪問日:2018.09.22 TOP 町並INDEX