小大下島の郷愁風景

愛媛県関前村<産業集落> 地図 <今治市>
-石灰岩採掘で潤った産業の島- 町並度 4 非俗化度 8

    





小大下島の集落(港付近)


 小大下島は大下島の西、岡村島との間にある面積わずか0.9㎢の島である。
 この島の特徴は大部分が石灰岩で形作られていることで、島は石灰岩の採掘により明治期より発展、第一次大戦を契機に企業の進出もあって大規模に採掘が行われた。一部は海面下まで掘り下げられ、現在もその露天掘りの跡が見られる。
 大下島と同様に岡村島と大三島、今治とを結ぶ旅客船やフェリーが寄港し、島を訪ねるのは比較的容易である。北岸にある小さな港付近に集落が開ける。現在の人口は20人前後とのことであるが、家数はその3倍はあるように思える。空家となっている家屋も多いのだろう。
 港から低い丘を越え反対側に出ると異様な景観が見られる。石灰石の露天掘を行った穴に水が溜り池となっている。それがとても透き通った清い水なのである。実はこれは淡水だそうで、大下島や岡村島の生活用水ともなっているという。島独特の淡水レンズという水のあり方で、露天掘によって地下水層に達したことで湧出したものと考えられるが、採掘によって得られた思わぬ副産物といえよう。
 この南岸付近にはもう一つ特徴的な風景がある。海岸付近に立派な屋敷型邸宅が残っていることだ。残念ながら住居として使われなくなり久しいようでその姿は痛ましいが、石灰石採掘盛んな頃、企業によって建てられたものという。常駐する主だった者の邸宅だったのだろうか。港付近にも所々に小島とは思えない立派な造りの商家型建物が見られるのも、石灰採掘業に携わった家々ではと思われる。
  








かつての採掘場の跡 淡水が湛えられた池となっている   採掘所周辺に残る企業が所有していたと思われる邸宅跡




訪問日:2021.04.11 TOP 町並INDEX