小白倉の郷愁風景

新潟県川西町<山村集落> 地図 <十日町市>
 
町並(集落景観)度 6 非俗化度 10 −豪雪地帯の山懐に開ける美しい集落−

小白倉集落の風景

 

 小白倉は位置的には小千谷市、十日町市中心部を底辺とした三角形の頂点にあり、どちらからも30分ほどでたどり着くことができる。付近は300m前後の山地の連なる丘陵地帯となっており、我国でも有数の豪雪地帯に位置する集落だ。
 谷間に約40戸の民家が固まる集落は、やや高い位置にある道路から全体を見渡すことが出来る。谷といっても広く明るく開けた盆地といった感じであり、適度な間隔を置いて民家と田園、樹木が絶妙の山村風景をつくり出している。まず印象的なのが屋根で、かつては全て茅葺だったのがほとんどトタンで覆われているが、それらが茅葺時代の屋根の形を保ちながら、様々な色に塗られているその様が壮観であった。トタンで被われた茅葺などと思われるかもしれないが、丁度新緑の季節で、原色でない控えめな色で散在するそれらの色彩が巧に周囲の景色と同調しているようであった。 無論茅葺そのままの方が見応え充分であることは言うまでもないが、全く保存などの手の入っていないこの集落は雪が多い地区であることもあり、茅の手入れも大変で已むを得ないことだろう。それでも数棟、茅のままの民家が残っていた。
 そして建て方は中門造りとよばれるこの地方独特のもので、主屋の正面から前に突出した玄関を持っている。主屋に対してかなり大きく、もはや中門とは言えないほどのものや、裏側の物置を中門風に設置しているものなどもあるが、ほとんどの家屋の平側(正面)に突出部が設けられている。これは多雪対策の一つで、主屋の屋根から落ちた堆い雪から前に出た入口を設けて通路を確保する役割を果たしている。中門の正面は真壁となっている例が多く、一層趣深い集落風景を形成していた。
 この小白倉は「美しい日本の村景観コンテスト」で農林水産大臣賞を受賞するなど、集落景観として高い評価を受けている。しかし一般的にはまだ知られておらず、山村集落の原型が良く保たれている。
 訪ねた時、所々で田植えが行われていて、蛙の鳴声が満ちていた。淡い新緑に囲まれた家並は山村集落の真骨頂をみる思いであった。








茅葺の中門を持つ民家



訪問日:2007.05.05 TOP 町並INDEX