今江の郷愁風景

石川県小松市<在郷町> 地図 
町並度 4 非俗化度 8 −舟運で栄えた水郷地帯の一角に位置する町−





今江町7丁目の町並




かつて船着場のあった前川沿いの風景




 小松市今江町は市街中心から約3km南、周囲は片山津温泉のある柴山潟など沼沢地で、この今江町も木場潟という湖から流れ出る前川の両岸に開ける。この川は梯川に合流し、河口部には北前船が寄港した古い港町・安宅がある。
前川に見られる江戸時代の護岸




今江町2丁目の町並 石造の蔵を構えた家が目立つ
 

 前田利常が小松城に在城の頃にはこの今江に家臣の近藤加左衛門の屋敷があった。また北陸道の通る地でもあり、人の往来も多い土地であった。
 大聖寺藩との境界にあったことから荷物の改番所があった。以前は町域の西、小松空港の東側一帯に今江潟があり、前川は木場潟との間をつなぐ水路のような形であった。番所はその前川沿いに設けられ、船の荷が改められていた。現在でも県道の橋のたもと付近に往時の護岸の名残が見られる。
 河口部の安宅で北前船等の大型商船の荷が取扱われていた事もあり、街道と接する位置にあったこともあり船着場を中心とした繁栄があった。前川沿いを見渡すと、あちらこちらにこの地方独特の黄味を帯びた石蔵が見られ、また川岸に下りる階段なども残っていることから、川に船を接岸させ荷を揚げていた様子が想像できる。
 また今江潟や木場潟は汽水というその特徴から鯔(ボラ)・鯉・鯰・蜆などが豊かで漁が行われ、それらは小松町をはじめ近隣の町に売られた。明治9年の記録では200艘余りの船があったというがそうした状況から廻船より漁船が多くを占めていたと思われる。木綿や菜種、酒造なども盛んでそれらの商品も小松町や大聖寺町をはじめ各地に出荷されていた。
 地元では、「前川水辺ネットワーク構想」というかつての船着場の歴史的景観を生かした街づくり事業が策定され、訪ねたとき施工中であった護岸工事などもその一環と思われる。舟運文化の面影が残る町並として認識されており、案内板の設置なども行われていた。

訪問日:2015.06.13 TOP 町並INDEX