小室の郷愁風景

山梨県増穂町【門前町】 地図
 
町並度 4 非俗化度 6 −今は訪れる客も少ない静かな門前街−




小室の町並 瓦を葺いた門をくぐると門前町が始まる



妙法寺の山門 改修中であった


 甲府盆地の南端・釜無川と笛吹川の合流点付近、鰍沢の市街地から小さな流れに沿って西へ向うとやがて増穂町域に入り、しばらく進むと右手斜面上に集落の広がりが眼に入る。小室地区である。
 歴史は古く、持統7(693)年開山されたともいわれる古刹・妙法寺の門前町である。特に江戸時代以降は小室山と呼ばれるほど参詣者が多く門前はたいそうな賑わいを示していた。これは身延山に参る客の通り道となっていたことも大きいが、妙法寺で発行されていた毒消し御符は落語「鰍沢」にも登場するほど知名度の高いものであり、また「夢想膏」と呼ばれた膏薬、框飴という菓子など名物が多く訪れる者の多くはそれらを求めた。
 参詣者が特に殺到したのが毎秋の御会式の折で、全山が人並で埋まるほどの盛況であったらしい。
 現在の門前街はそのような賑わいは全く想像すら出来ないものとなっている。だいたい門前町としての体裁自体も危うく、屋号が掲示されているのがもと宿屋であったことを示しているものの、営業されている気配は感じられなかった。私が訪ねたのは正月三ヶ日であるにもかかわらず訪れる人も皆無で、しかも山門は大規模に改修中であった。幾ら賑わいを示していても、民衆の信仰心が薄らいでしまうとこうなってしまうのか、少々寂しさを感じる探訪であった。
 
 











 坂道になっている参道沿いにはトタンに被われた独特の構えの民家が連なっている。これらはもと茅葺だったに違いなく、兜造りのような外観を示したものもある。いずれも屋根の一方を参道に向けた平入り形式であったが、隣家との間隔が比較的広く取ってあるためか、特徴的な妻部もよく見える。
 わずか200mほどの一本道に展開する小さな町並である。ここの家々がトタンに覆われて居なかった頃は、参詣客も多く賑っていたのだろうと思いながら後にした。

 
   
訪問日:2009.01.02 TOP 町並INDEX