江南の郷愁風景

愛知県江南市在郷町 地図 
町並度 5 非俗化度 8 −根菜と養蚕の盛んだった木曽川左岸の町−




古知野町古渡の町並


 江南市は木曽川の南に位置することを由来に名付けられた市名で、戦後周囲の町村を合併して成立したものである。従って江南の地名に歴史性はない。ここで紹介するのは旧古知野町に所属していた地区である。
 この付近は古くから主要街道が交差していたところで、木曽川左岸には犬山城下から一宮を結んでいた通称巡見街道、市域の南部には名古屋と犬山を結ぶ岩倉街道が通じていた。古知野は付近の中心地で、18世紀前半の享保期に六斎市が開かれていた。
 犬山扇状地とよばれる砂質土壌地帯が広範囲に分布しており、水はけが良すぎることから農作物は稲作には不適で、大根や牛蒡、里芋などの根菜類や、桑の栽培が主体であった。奈良漬を思わせる守口大根もこの地域を代表する特産品で、根菜栽培の盛んな土地であることがわかる。明治に入ってからは製糸工場が立地し、農家はほとんどが養蚕に携わっていたという。繊維産業の発展は近現代におけるこの町の根幹をなすもので、現在でも化繊織物産業が盛んに行われている。
 名鉄江南駅からも近い旧古知野町の中心部には伝統的な町並が今でも残っていた。但し多くは商店街となっているため、板に被われたものや改装されたものも少なくない。一部には洋風の外観を留めるものもあって明治以降の町の発展を今に刻んでいた。
 切妻造りの平入り家屋が並ぶ姿は古い町並らしい風景であるが、商店街としては活気に乏しい様子で、やがては建物諸共大規模に更新されてしまう懸念もぬぐえない。レトロ商店街として売り出す手もあるものの、成功例は数少なく、今後どのように商業地域の活性化と町並の保持を均衡していけるかが課題だろう。
 




古知野町本郷の町並




古知野町本郷の町並 洋風建築や看板建築も周囲には多く見られる
訪問日:2010.01.01 TOP 町並INDEX