広陵の郷愁風景

奈良県広陵町【在郷 地図
 
町並度 5 非俗化度 9  −県下最大の人口を擁する町に残る古い町並−





広陵(萱野)の町並


 広陵町は奈良盆地の北西部、近鉄田原本線が町域の北部を横断しているがローカル路線のため優等列車は走っておらずまた駅舎もささやかなものである。しかし近郊住宅地としては都市化が進んでおり人口は3万人を超えており、奈良県下で最大の人口を抱える町となっている。
 しかしながら近鉄箸尾駅周辺の佇まいは歴史性を強く感じさせ、古い町並を伴うものであった。
 江戸期から明治にかけての奈良盆地の各町は主要街道沿いや寺社の門前町のみならずとも、主要産業であった綿作、菜種油などの産業、また酒造などにより多数の在郷商業町が立地していて、近年に至っても大規模な都市化を免れた結果伝統的な町並風景を保持している例が多い。その密度は全国屈指のもので、諸史跡に探訪者の眼が向いている一方で、町並そのものに着目されることが少ないために原型に近い姿が残されている町が多い。
 綿花は大和川の水運により大坂や江戸に送られ、その利益で商家が発達して町場が形成された。盆地一帯で盛んであったため、この町独自に発展したというよりは周囲の町々と同様に裕福な集落が形成され、付近もその一つであったというほうが正確かもしれない。
 袖壁や格子を設えた平入りの町家建築が多く見られ古い町並を形成していた。幹線道路の整備は古くから発達していたこれらの町並の外縁に建設されたため、静かな家並風景が今でも保たれていた。
 幹線道路もなく通過点にもなりにくい町であるが、経済・産業的には古くからの拠点にあったところである。
 









訪問日:2012.07.15 TOP 町並INDEX