越畑の郷愁風景

岡山県鏡野町【農村集落】 地図
 町並(集落景観)度 5 非俗化度 7
 −周囲から隔てられた谷間に展開する原風景的農村−














越畑集落の風景
 
 鏡野町越畑は吉井川の支流、香々美川沿いの細い谷間に開ける地区である。
 江戸時代には製鉄業が盛んに行われた土地で、関ヶ原合戦の頃からこの地に息づいたとされている。中国山地一帯で盛んだったタタラ製鉄は山村民にとって根幹となる収入源であり、この越畑においても例外ではなかった。
 しかしその生産は常に安定していたわけではなく、衰退と再開発を繰返し明治を迎えたことが記録に残っている。
 その他、越畑炭と呼ばれた木炭の生産、木地造りなどを生業とする者が多く、それに比べ農産物の収量は少なく山村集落として歴史を刻んできたところだ。
 東西を1000m級の峰々に囲まれているが、西に奥津、東に加茂と在郷商業町を控え、物資の往来も少なくなかったこともあって山村としては比較的恵まれた生活が確保されていたものと思われる。
 集落として特筆されるのが、比較的大柄な住宅が目立ち茅葺のものも少なからず現存する点であり、山村集落としての原風景的なものが残されている。県はここをふるさと村の一つとして指定しており、一部では茅葺の民家を利用した施設なども見られるが、訪れる人は少なく素朴な山村風景が展開している。
 谷間を辿る道路は北に向かい袋小路状となっており、奥津温泉や加茂方面に向う山越えの道はあるが、通過点にもなりにくい場所にある。かといって津山などの市街地からそれほど距離があるわけではなく、極端な過疎の波に攫われることもなかったため比較的良好な農村風景が残されているといえる。

 

訪問日:2012.10.08 TOP 町並INDEX