特牛の郷愁風景

山口県豊北町【港町・漁村】 地図 <下関市>
町並度  4 非俗化度  10  −西長門屈指の風待ち港であった−




特牛の町並
 
 特牛は県の北西部、西に響灘を控える地にある。山陰本線の特牛駅を持って難読地名として知られることが多く、そのコットイという独特の響きからも興味を抱かせるところである。牛の古語であるコトヒに由来しているとも言われるが定かではない。
 西長門地方の海岸線は北に行くほど平地に乏しく、特牛は溺れ谷に開けた天然の良港として古い歴史を持つ。特に冬季には季節風の影響で高波に襲われるこの海域にあって、風待ち港としての役割は大きかった。小規模商船の避難所として利用され、この地域屈指の港町として江戸後期から明治にかけて発展したところである。慶応3年の入港船数は200隻以上との記録も残っている。船乗りが停泊するところとして旅館や遊郭も形成されたとされ、最盛期には茶屋・置屋がそれぞれ2軒、遊女が20数人存在していたという。
 船の性能が向上した現代にあってはそのような必要もなくなり、今では小さな漁村として鰤やイカ、サザエなどの近海漁業が行われている程度である。いつの間にか通過してしまうようなところだ。しかし集落に足を踏み入れていると零細な漁村の佇まいとは一味違う。商業的に豊かであっただろう面影があちこちに残り、店舗だったらしい厳かな建物も幾つか眼につく。
 それらの建物も無住になっている姿もあり、いずれは更地となって面影も失われてしまうのかもしれない。
 









訪問日:2011.10.09 TOP 町並INDEX