富貴の郷愁風景

和歌山県高野町【在郷町】 地図 
 
町並度 5 非俗化度 7 −高野山と奥吉野・熊野方面を結ぶ街道上の山間集落−






商家風建物も多く見られる富貴の町並


 高野町富貴は町域の最東端、高野山とはかなり離れた位置であり集落へのアクセスも異なる。紀伊半島中央に重畳と展開する山岳地帯の北端といって良い場所にあり、標高600mほどのところに開けた小盆地に家々が固まっている。
 蕗とも表記し、古くは蕗荘という荘園も立地していた。中世以降高野山領として経過し、高野山とつながりの深い地域であった。天正19年の『高野山寺領注文』には、「ふき、ひかしふき、にしふき」とあり計717石余りと記される。明治22年西富貴・東富貴・上筒香・中筒香・下筒香の5村が合併し富貴村となり、昭和33年に高野町の一部となった。古くから高野山と奥吉野、さらに熊野を結ぶ街道上に位置しており、在郷商業町的性格を持ち賑わった。
 ここに達するにはかなりの苦労を要し、最も短距離なのが紀ノ川沿いから山間部に入るルートだろうが延々と細い山道が続き、途中には断崖の中腹を辿るような個所もあり、まさに天界の村といったところである。しかし、到着してみると予想外の町並の広がりがあり、その意外性も魅力の一つといえるだろう。
 
家々も二階正面に木製欄干を備え一見旅館風に見える大柄な建物をはじめ、中二階で虫籠窓を持つものや立派な土蔵を従えるものなど、古い町並としてはかなり発達した商業町の様相が伺え、賑わった様子が想像できる。
 地元では地域の魅力を訪問者に伝えようと、手書きの案内地図なども見られた。地味ながら意識されている様子がうかがえる。



店先にあった手づくりの案内図




 



 

訪問日:2024.09.14 TOP 町並INDEX