今高野山門前の郷愁風景

広島県甲山町<門前町>　地図
　町並度　4　非俗化度　8 −西の高野山の門前町−




　これは本格的な木造建築の旅館。宿場町としての役割を終えても門前町としてしばらく栄えていたようです。 古い町並は連続してはいませんがこのような厳かな屋敷も残ります。




洋風建築も残ります。 今高野山龍華寺
　
　甲山町は府中市の西隣の町で、江戸時代より銀山街道（石見街道）が通り銀・塩・年貢の往来が盛んであった。旧街道は国道が踏襲しなかったことで、ある程度古い町並が残されている。
　甲山は街道集落であるだけでなく、古くは平安末期から広大な大田荘とよばれる荘園が開かれていた。地元の領主橘氏の所領であったが、後に平重衡（たいらのしげひら）にこの荘園を譲渡した。壇ノ浦の合戦により平氏が滅びると、重衡は後白河院に同荘を寄進した。後白河院は平氏一門の菩提を弔うため、同荘を高野山に寄進した。これより当地は高野山の統治するところとなり、その象徴として今高野山を構えた。今高野とは新しい高野山の領地という意味で名付けられたものなのだろう。
　今高野山は最盛期には龍華寺をはじめ7堂12院を有した。こんな山奥の田舎町にといっては失礼だが、町の南部の丘陵に室町後期の建築である総門をはじめ観音堂、大師堂などを訪ねることができる。
　今ではウォーキングの中高年や犬の散歩のコースとなっているようで、近くに最近オープンした日帰り温泉の客が訪れる程度である。かつての繁栄には及ぶべくもないが、門前の旧街道には名残が残っている。まずこの小さな町に不似合いな旅館の多さ。しかもそれらは木造二階建ての堂々としたつくりのものが多く、洋館も目につき、少なくとも明治期までは銀山街道の宿駅と同時に、門前町の役割を果たしていたのではなかろうか。広大な敷地を持つ屋敷型邸宅も残っている。
　近世になっても世羅郡の中心地として行政、経済の中枢であったが、国道から外れてしまった今、かつての活気はこの道筋からは感じられない。しかしそれが逆に古き町の姿を残す結果となっている。
　



訪問日：2002.12.01 TOP 町並INDEX