西向の郷愁風景

和歌山県古座町【産業町】 地図 <串本町>
 
町並度 4 非俗化度 10 −古座川の河口部に位置し木材加工を中心に発達−








西向の町並


 屈指の清流として知られる古座川。その河口付近右岸に西向地区がある。左岸側の古座地区とともに比較的発達した市街地を形成している。
 和歌山藩領の時代は御蔵所(藩米等の年貢を収納する場)が置かれ、古座組に属していた。紀伊半島内陸部から流れ下る川の河口にあったことで上流側から木材をはじめ米、薪炭などが運ばれ、ここから海運に委ねられた。西向地区にはそれを基盤に廻船業、醸造業などが発達した。木材の加工場も多く、これは明治以降になっても近代的な製剤工場として地区の基幹産業となった。
 江戸前期の寛永21(1644)には既に126人の人口、17艘の船を所有していたという記録がある(『郷組之事』)。
 紀勢本線の古座駅周辺は近代的な商業地・住宅地が広がっているが、海岸部の国道42号線に近い道筋に往時の町並が残っている。この道筋は旧紀州街道に該当する。古い町並は古座川に突当る箇所から直ちに始まり、神野川という小さな川を渡る手前辺りまで1km弱にわたって続く。伝統的建物の比率はそれほど高いものではないが、県道38号線に交わる手前付近には一部連続した箇所もある。それらは木質感の高い外観を持ち、親子格子や二階正面の木製欄干などが特徴として挙げられる。また下見板張りの洋風の外観を持つ建物も見られた。
 古座川の河口付近は川幅も広く水深も深いため、かつては渡しに頼っていたに違いない。対岸の古座地区とは様相の異なる町並であった。
 
 




訪問日:2015.12.28 TOP 町並INDEX