口羽の郷愁風景

島根県羽須美村<在郷町> 地図 <邑南町>
町並度 6 非俗化度 10 −江の川沿いの小さな在郷町−









下口羽の町並


 広島県との境に接し江の川の中流域に展開する口羽地区。かつて口羽村と阿須那村が合併して羽須美村となり、役所は口羽に置かれまた国鉄三江線の主要駅が置かれるなど地域の中心として位置付けられたところである。
 中世には戦略的拠点がここに設けられ、尼子氏に対する攻防や大森銀山の守護などに対する基地として琵琶甲城が存在していた。それは江の川と支流の出羽川の合流点にあり、それらが自然の濠として利用できたからだといわれている。
 近代には市が定期的に開かれ、特に牛馬市は下口羽の牛馬市として有名だった。明治の頃に繁栄の頂点を迎え各種商店が並び、町場は賑った。付近一帯で盛んに行われた砂鉄採取の影響も大きかった。
 この付近は広島県とのつながりが深く、三次や広島の商圏となっている。昭和38年に三江南線により三次と結びついた。しかし以後は自動車交通の台頭により過疎の道を辿り、三江線として江津まで全通した頃には既に典型的な赤字ローカル線となっており、2018年にその短い役目を終えた。
 しかし口羽駅から南東に旧道を辿ると、繁栄時代の残照が大変濃く残っていた。袖壁を両妻部に張り出した切妻の町家、漆喰に塗り回された土蔵、そして散見される旅館建築。過疎地域の只中にありながら見応え感の高い古い町並を形成していた。屋根瓦はほぼ石見地方独特の赤褐色で統一されており、木造旅館のたたずまいからはここに商人や旅人が多く滞在したかつての賑わいを証明していた。  
 






新旧郵便局の建物
街路裏手には土蔵の連なりもあった
 

※2023.04最終訪問時撮影

訪問日:2010.05.04
2023.04.30最終訪問
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