奥の郷愁風景

沖縄県国頭村<農村集落・港町> 地図
 
町並度 5 非俗化度 8 −寄棟平屋で統一された沖縄本島最北の集落−





 沖縄島は南北に長く100kmほどあり、南部は那覇をはじめとする市街地が多いが、北部は山がちで町や集落も少ない。特に地元のことばでヤンバル(山原)と呼ばれる国頭村を中心とした地区は従来の琉球的文化が濃く残っており、集落の姿も素朴さを感じるものが多い。




 

 この奥集落は字の通り島の最北端にある集落であり、那覇よりも鹿児島県南端の与論島の方が近い位置にある。国道58号線の島内での起点となっているが、鹿児島市に起点を持ち種子島や奄美大島などを経由し途中は海で途切れている珍しい国道だ。
 首里王府時代は国頭間切に属し、与論島や奄美方面との往来も多い土地であった。当時は港町としての機能があったようで、船改めを行う役人も配備されていた。辺地の貧しい地域であったようで、多く自生していた蘇鉄を食用とし周囲の間切に配布していたという記録が残る。
 しかし背後に広大に展開する山地からは良質の木材が得られ、明治以降は主要産業となった。茶や砂糖きび、パイナップルなども盛んに栽培され農業を生業とするものが多く、一時は1,000人を超える人口を有していた。
 現在は寒村ともいうべき小さな集落で、太平洋に注ぐ奥川の河口に近いが、周囲を山に囲まれており内陸の盆地のような風景である。主に左岸側の狭い平地に家々が固まっており、その一番の特徴は平面的にほぼ正方形をなす寄棟の屋根である。沖縄の標準的な民家の形は寄棟の平屋であるが、これほどその比率の高い集落は珍しい。
 古いものは本来丸瓦であるが、多くは平瓦に変えられており、一部にはコンクリート瓦も見られる。また塀も琉球石灰岩ではなくほとんどがブロック塀となっており、その点では比較的新しい形式が取り入れられているといえる。しかし伝統的な建物のほとんどが失われている本島地区においては稀少度の高いものであり、高い統一感は見応えを感じるものであった。
 集落の中心に奥共同店と書かれた店舗がある。集落唯一のスーパーマーケット風の店舗である。共同店とは沖縄独特のもので、その集落の住民がお互いに出資し運営しているものである。本島北部や離島の一部にこの形の店が見られるが、第一号がこの奥の共同店であったという。
 









訪問日:2013.01.03 TOP 町並INDEX