武蔵の郷愁風景

大分県武蔵町【在郷町】 地図 <国東市>
 
町並度 4 非俗化度 10 −海運で栄えた面影が空港近くにひっそりと残る−
 
 

 

武蔵(古市)の町並  
 

 

 

 武蔵町は国東半島の南東部、大分空港のある町で周囲の道路も整備され、それらを通過するだけでは古い姿が存在しているとは思えない風景が展開している。
 古くから集落が発達したのは武蔵川下流左岸付近で、ここには古市と今市という杵築藩の在町が置かれていた。現在、半島海岸部を周回する国道から県道55号に入っていく辺りに公共施設や商店が集まり、新市街地を形成している一方、この川沿いの界隈は昔のままの道幅で、家並も古びている。
 この一帯は七島筵・七島藺
(い草)と呼ばれる筵・畳表の生産が盛んで、古市・今市はその積出によって賑わった。海運業者も現れ、豪商も生れた。杵築城下に休息屋敷を持つことを許された郷町人もあったという。商域は瀬戸内各地のほか山陰方面にも及び、石見国浜田の廻船問屋清水屋の客船帳には江戸中期から明治にかけ古市から5隻、武蔵から9隻の船が入港したとの記録がある。
 明治以降も七島藺のほか米・麦などの農業が盛んで、昭和戦後になっても七島藺の移出量4万束弱(昭和34年)との記録がある。
 国道から川沿いの旧道に入ると俄かに道幅が狭まり、周囲の現代的な様子との対比が今となっては滑稽な感もある。妻入り・平入の混在する家並は所々更地になっているものの、在郷商業町に発祥する歴史のある町であることが伝わってくる。劇場か映画館を思わせるような建物もあった。街路から少し外れた所には廃棄されて植生に覆われているのが痛ましいものの、大変立派な屋根を持つ邸も見られた。
 
 これは劇場あるいは映画館だったものか 
 

 
 



 
   

訪問日:2021.11.14 TOP 町並INDEX