鹿老渡・宮の口の郷愁風景

広島県倉橋町<漁村・港町> 地図 <呉市>
 
町並度 4 非俗化度 8 −風待ち港と石垣集落−
 


鹿老渡の宮林家。現在でも旅館を経営しています。

宮の口の集落風景 宮の口の町並




宮の口の町並 宮の口集落背後の段々畑

 呉市の南に浮ぶ倉橋島の南端近くに鹿老渡(かろうと)の港町はある。山がちな島の地勢のなかでここは穏やかな砂洲が狭いながらも開け、それに抱かれた入江は古くから風待ち、潮待ちの良港として利用されてきた。
 瀬戸内中央部へとせり出した位置にあり、九州の大名諸氏の参勤交代の折にここを休泊地とした。本陣も設けられ、その一つ宮林家が現在も宿泊業を続けている。
 宮林家は江戸末期の姿を良く残し、主家は平屋建ながら大きな蔵を従え、格子が美しい。入口には提灯掛けがあり情緒を感じる。また、先に述べたように九州とのつながりが強く日向材木を扱った豪商でもあり、内部は檜の大きな大黒柱が立てられているという。
 港町として整備された町は砂洲上に碁盤の目状に整えられ、平入の民家が並んでいるが、古いものはこの宮林家の他には余り残っていない。
 鹿老渡のさらに南に浮ぶ鹿島へは橋が架かり本土ともつながっている。ここはいよいよ平地が少なく、わずかな集落はその内部に車の進入を許さない。道なりに突当たった宮の口の集落は、鹿島の集落を象徴するような所だ。狭い平坦地は全て密集する家並で埋まり、路地が錯綜する。斜面部では段々畑のような石垣が築かれた上に家がある。それが路地の線形なりにカーブしている姿は、芸術品ともいえる。
 石垣はこの島の風物である。倉橋島は古くからの石切場があり、石材の入手は容易だったこともあり、斜面の克服に利用された。集落裏手には見事なまでの石垣の段々畑が広がり、息を飲むような光景であった。
 

 

訪問日:2001.12.16・2003.05.18 TOP 町並INDEX