楠原の郷愁風景

三重県芸濃町【宿場町】 地図  <津市>
 町並度 6 非俗化度 9  −畿内と伊勢を短絡する伊勢別街道の宿駅−














楠原の町並


 楠原地区は亀山市街地より南西に3km、丘陵が交錯する一帯にある。近くには伊勢自動車道のジャンクションもあり、現代自動車交通の要衝であるが、この町並はそれとは無縁とばかりに旧来の細い街道に展開していた。
 この街路は伊勢別街道とよばれるもので、東海道亀山宿の一つ西の宿場町であった関の東追分からはじまりこの楠原を経て、椋本、一身田、そして津とを結ぶものであった。この地方は各地から伊勢参りに向ってきた客が密度を増してくるので、大小さまざまな街路が交錯収斂している。
 伊勢別街道は京都や近江方面からは東海道と伊勢街道を短絡するルートであったので、畿内からの参宮客の多くがここを通過していった。参宮道、伊勢道、山田道などとの通称もあったという。
 楠原は関宿からおよそ1.5kmほどしか離れておらず、どちらかというと南側の椋本宿を補完する役割の宿駅であった。東海道に大通行があって関宿に宿泊できないときなどに多く利用されたのだろうか。
 街路の幅はようやく乗用車が離合できるかというほどの細いもので、主要街道宿場町の雰囲気ではない。しかしそれが町並景観を際立ているともいえよう。地形に忠実に緩やかに曲線を描き、中央で一箇所枡形を設けた旧宿場街には連続性の高い古い町並があった。特徴的なのがつし二階の平入り、総二階の妻入り、一部には入母屋屋根を持つものなど、さまざまな様式の建物が見られることだ。それが緩いカーブに沿い建ち並びなかなか壮観である。
 自動車での交通の便はよいが、陰に隠れたような位置にあるため地元の人以外は近くを通ることもなく、静かに眠ったような町並であった。 
 
訪問日:2012.11.04 TOP 町並INDEX