沓野温泉の郷愁風景

長野県山ノ内町【温泉町・農村集落】 地図
 町並度 5 非俗化度 8
  −段丘上の静かな温泉場−
 


 沓野温泉は、湯田中・渋温泉街と夜間瀬川を挟んだ対岸に位置し、段丘上の坂道に沿い家並が展開する。湯田中渋温泉郷の一角にあるものの、他の9箇所の温泉地とともに入れられたり入らなかったり、地図の中には、温泉名自体が表示されないものもある。
このように温泉郷の中では今一つ存在感が薄く、ややもすると不当な扱いを受けているようにすら感じられるが、それがこの町並の良いところでもある。
 温泉街というには控えめで、渋温泉とは対照的に温泉客の姿もほとんど見ない。その中にあって、立派な二階屋を構える「沓野館」が異彩を放つ。温泉は19世紀前半の文政の頃とされる。宿の前の道はかつて草津方面とを結んでいた街道で、温泉宿は旅人の疲れを癒すものとして親しまれた。他に数軒の温泉宿があり、また共同浴場もあるなど、温泉地としての風情・体裁が保たれている。
 地区の西側に、大柄な蔵造りの主屋が特徴の「玉村本店」がある。文化2(1805)創業の老舗造り酒屋で、屋号は初代が酒造の修行を行ったという上州玉村に因むものという。街道の旅人や温泉宿で提供する酒など需要に恵まれ、『縁喜』という銘柄で親しまれている。
 西側から緩い坂が続き、道路端には清い水の流れがあり爽やかさを感じながらの探訪であった。
 川と谷間を挟んだ先に渋温泉街が見おろされ、大小の旅館群が建ち並ぶ姿が対照的な佇まいを示していた。
 
 



 
沓野温泉の町並 左は玉村本店  旅館・沓野荘 
 

 

   
 



 
   

訪問日:2024.06.02 TOP 町並INDEX