久崎の郷愁風景

兵庫県上月町<商業町・港町> 地図 <佐用町>
 
町並度 4 非俗化度 10 −物資が集積する水陸両方の拠点−





 上月町久崎は千種川に佐用川が合流する付近にある町場で、古くは千種川水運での高瀬舟の遡上限界であった。そのため水陸双方の交通の要衝で、美作東部の英田郡域を含む周辺の村々から年貢米や木材、薪炭などが集められて舟に積替えられ、赤穂の港へと運ばれていった。帰りは赤穂特産の塩や魚介類、日用品を積込んで久崎に戻る。町には物品が溢れ大きく賑っていたという。
上月町久崎の町並


 川港には御蔵が置かれ、三日月藩の指定問屋も立地した。江戸末期の安政3(1856)年には舟
45艘を保有し、千種川を往来していた。賃貸料は一往復当り米二斗とされ、一艘当り運搬できる米は十五から二十石。
 千種川の西岸を南北に貫く国道373号はかつての久崎の町の中心であったらしく、所々に間口の広い商家建築を見ることが出来る。一部を除いて二階の立上りが高く、明治後期から大正にかけてのものと思われるが、構えの大きさに裕福さが感じられる。一階はサッシ等に改装されているものが多い中、商家らしく開放的な間取りだった。おそらくかつては蔀戸が取付けてあったのだろう。
 国道沿いでありながらそれほど車の交通量は多くないが、かつて人々で賑っただろう雰囲気はそれら僅かに残る旧家に求められるだけで、完全な通過点となっている。やがてそれも歯抜けになり更新され、町並からは昔日を偲べるものは全くなくなってしまうだろう。その日もそれほど遠くないようである。
 









訪問日:2004.11.21 TOP 町並INDEX