舞鶴吉原の郷愁風景

京都府舞鶴市【漁村】 地図 
 町並度 7 非俗化度 7  
−密集町家群ともいうべき独特の家並が見られる漁村集落−

         




 舞鶴は西舞鶴・東舞鶴と一般的に呼ばれているように市街地が大きく東西に分かれている。ここで紹介する吉原地区は西舞鶴の最も海に近い位置にあり、独特の漁村風景が展開していた。
吉原地区の港風景








吉原地区の町並 裏手の運河沿いは漁村集落といったたたずまいだが 表通りはいずれも町家の外観だ 間口が狭く密集しており迫力を感じる
 


 舞鶴の町の北端にあり、古くは城下町の外れという位置づけにもあった。歴史の古い漁村集落で、舞鶴の中心市街地の町尻と呼ばれていた。要は場末ということであるが、一方で漁業については自由に行えるよう特権が与えられていたようで、町場としても発展した。
 伊佐津川河口右岸に面し、中央に運河のような細い入江がある。この集落を特徴付ける最たるものがその密集度だ。路地を行けども行けども家屋の連なりがあり、なかなか横道や脇道が現れない。その印象を強めるのが家々の間口の狭さだ。限られた土地を有効的に利用しようという密集型の集落は漁村ではよく見られる。
 しかし漁村という視点でこの吉原地区を訪ねると、町並景観的に幾つかの矛盾を感じる。まず一つは家々の外観が町家風であることである。二階部分を漆喰に塗り回し、また袖壁を持つものもあり、間口が非常に狭いことから家並の連続性が強調される。町並として見応えのするものである。
 第二に町割が非常に人工的である点だ。街路は直線をなし、家々の区割も機械的で無機質であり、それは城下の町人町や大規模な宿場町のように、造成によって生れた町という印象である。やはりこれは城下町時代に計画的に町域が拡張した影響なのか。
 家々の裏手は先に書いた運河となっており、それを背に二つのエリアに分けられる。西側一帯が東吉原町、東側が西吉原町となっているのも面白い。運河沿いには本来の漁師町らしい風景が広がっておりこちらも趣を感じる。この付近は干満の差が僅かなのだろう、随分高い位置に海面がある。運河の水辺も日常の生活の一部だったに違いない。
 漁村のようでありながら、商家の連なりのような家並が見られるところ。不思議な魅力のある町並である。
 







訪問日:2009.08.15 TOP 町並INDEX