松井田の郷愁風景

群馬県松井田町宿場町 地図 (安中市)
 町並度 5 非俗化度 7  −妙義山を仰ぎ見る中山道上州路の宿駅−

 松井田は西を碓氷峠に限られ、信州へ境を接する町である。近年長野新幹線の開通で信越本線は分断されてしまったが、群馬県最西端の横川駅は長らく峠下の駅として知られていた。
松井田(上町)の町並




松井田(仲町)の町並


 中山道の昔からここは国境を控える重要な地で、碓氷峠の麓には関所が設けられ入鉄砲と出女
(江戸に入る武器類と江戸を出る大名の奥方をはじめとした女人)を厳しく取締った。加えて峠が比高500m以上の嶮しいものであるため、道中最大の難所として旅人に認識されていた。
 松井田宿と峠下の坂本宿に関しては「雨が降りゃこそ松井田泊り降らじゃ越しましょ坂本へ」と言われていて、碓氷の関所を通過する面倒さから旅足を速める大名一行その他通行客が多かった。そのため中山道の宿場町としては比較的小規模な方で、本陣は上の本陣・下の本陣と二軒あったが、隔月で任務を請負っていたそうで実質は一箇所であった。また旅籠は25軒で、江戸・京方それぞれの入口は木戸が設けられ門番が配置されていたという。
 またこの宿場は米宿と呼ばれており、それは信州各地から江戸廻米が集結し、その半数ほどが当宿の米商人に売却・換金され、残りは倉賀野宿より舟運に委ねられて江戸に運ばれていたためだ。宿駅業務よりも廻米の扱いの方が目立っていたのだろう。大量の米が入荷できることから酒造業もこの町で大きく発達した。
 現在旧松井田宿周辺の国道はバイパス化されており、交通量もさほどではなく比較的落着いて町並を歩くことができる。江戸方から下町・仲町・上町と連なり、下町付近ですこし曲線を描く他はほぼ一直線の見通しの良い宿場で、京方に向い緩やかな登りが続いている。家々は関東地方平野部で標準的な頭でっかちの外観を持つ町家建築もあるが、やや簡素な造りのトタン屋根を持つ家々も目立つ。これは地域柄、他の上州の町に比べ冬の寒さの厳しい土地であるため瓦屋根が発達しなかったためであろうか。二階部分正面に木製の欄干が張出しているものも多く、一見置屋の建物を想起させる。商店や現代風の住宅に改装、あるいは建替えられている箇所が目立つものの、古い町並としての体裁は保たれていた。
 この町からは南西方向に峨々たる山容を見せる妙義山が見渡せる。古くから奇峰として多くの登山客があり、また妙義神社など信仰の対象ともなっていた。街道沿いの古い商店に「妙義登山口」と書かれた看板も眼にした。
 松井田宿の中心・仲町の交差点より南側にも古い町並が見られ、黒漆喰の土蔵など趣のある風景が展開していた。これが妙義山登山道の入口であったのだろうか。
 




松井田(仲町より南へ分岐する脇道)の町並




松井田(下町)の町並 松井田(仲町)の町並

訪問日:2008.10.12 TOP 町並INDEX