松本は広々とした盆地に位置し、飛騨山脈の峰々を眺める美しい城下町である。
古くは深志と呼ばれ、城の名も深志城であった。中世に甲斐の国の小笠原氏が伊那地方からこの地に進出してきて、井川城を拠点に現在の松本城の位置に支城を築いている。天文19(1550)年には武田氏の侵攻を受けたが、その後小笠原貞慶が城に復して、その折に松本城と改名された。
城下町は城の北側を中心に武家屋敷を配置し、南側の女鳥羽側周辺の地域に町人街を設け多くの町家が建ちならんだ。ここに紹介する画像は中町通を中心とするそれら商業の町の姿である。
善光寺街道沿いでもあったこの通りには今でも土蔵造りの伝統的な旧家が多く残っている。城下の商人町は中町・本町・東町の3町を親町として、10の枝町から成っていた。女鳥羽川の南側に東西に伸びるこの中町通りは商人の活気に満ちた時代から、今では観光客による賑わいに転じている。黒漆喰に塗られた土蔵を利用したカレー屋、ギャラリーや資料館、現代風の店舗に使われたりと今ではすっかり名所の一つだ。しかし外観に極力手を加えず往時のままの姿を尊重していることは評価に値する。散策する観光客が居なければ往時そのままの町並の雰囲気は充分味わえる。
周囲は近代的な町並に変貌している中で、ここだけが昔日の面影を残し、それは人々に訪ねられることによって今後更にいい状態を維持していくようにすら感じられる。訪問客によって支えられていく新しい古い町並の姿に期待したい。 |
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