松岡の郷愁風景

福井県松岡町【城下町】 地図 <永平寺町>
 
町並度 5 非俗化度 9  −福井東郊の小さな城下町−





神明一丁目の町並




 松岡は福井市の東に接する町で、九頭竜川の中流に沿い町が開ける。町の中心は段丘の上にあり、なだらかな坂道がうねる特徴ある地形の上に立地している。福井市、勝山市とを結ぶ京福電鉄が通り、永平寺も近い。
 この町の基盤は小さいながらも城下町で、現在も街路が碁盤目状をなしていることからもそれが推測できる。福井藩主だった松平忠昌の没後、その妾との間に産れた子であった昌勝がその領域の一部であった松岡の地に遺領5万石を分知されて封じられたのが始まりとされる。この松岡藩はその後70年弱という短い間しか存在し得なかったが、越前北端を占める坂井郡から内陸部の大野郡、南部の南条郡など広範囲を統治し、福井城下の東側の諸地域の中心として機能した。
 古い町並は、重に国道416号線の北側、京福の駅にほど近いところから始っている。突当りの交差点付近に向うと、黒漆喰に塗り回され、袖壁を施した古色蒼然とした町家建築に出迎えられる。直交させず少しずらしたつくりとなっている交差点は城下町らしい往時の都市計画がそのまま残されているように感じられ、神明地区から薬師地区の境付近では直角に二度、街路が折れている。見通しを悪くし敵の目をくらますのに好都合で、城下町や重要な宿場町で良く見られる。断続的に古い町家建築が残っており、中には本うだつのある旧家もあった。
 
神明一丁目の町並
薬師二丁目の町並


 国道により町が二分されている形となっており、南側は行政機関や学校があり、付近は更新された町並となっている。しかし平入りの大変広い間口を持つ主屋と、それに従う土蔵が印象的な黒龍酒造付近にも町家が散在していた。
 城下町としての役割を終えてからも、松岡は地域の中心的な地位を守り続け各種産業が盛んに行われた。鋳物産業は特に寺の鐘において越前一円の需要を一手に引受けていたといわれ、竹細工、木綿製品なども盛んで、明治以降には機織業が導入され、福井名産の羽二重の幾分かもここで生産されていたという。大正10年には工場・作業所は60余りを数えていた。
 現在は福井近郊の小さな町という印象でしかないが、内包された繁栄の歴史は深くこの町に根付いていることが、町並を探訪すると感じられる。




春日一丁目の町並(黒龍酒造) 春日二丁目の町並


訪問日:2007.10.03 TOP 町並INDEX