大黒田町の郷愁風景

三重県松阪市【商業町・街道集落】 地図
町並度 6 非俗化度 10  −松坂城下の入口にあった街村−





 松阪市の市街地の南の入口といった場所にこの大黒田町はある。かつては南黒田・北黒田と呼ばれていたところ、北黒田が松坂に接する主要な村であるところから大黒田と改称されたのだという。




伝統的な建物が密度濃く連なる大黒田町の町並
 

 
 旧和歌山街道沿いに展開する街村が立地の由来であり、今残る町並としての歴史的姿は街道上の小さな在郷町といった風情である。しかし家々の佇まいはなかなかどうして見応えのする町家が連なり、典型的な古い町並の風景が残されていた。江戸末期に建築されたと思われるものもあり、つし2階部分には虫籠窓が穿たれ、両妻部には袖壁が張り出している。1階部分には出格子が端正に保たれている旧家もあって、電柱が無ければ往時の姿そのままともいえる町並が残されている。
 大黒田村は松坂城下の外縁部に位置していたことから、松坂に通う要人や旅人、さらには伊勢宮へ参る人々なども頻繁に通り、また周囲に肥沃な農村地帯を抱え、穀物をはじめ木綿や煙草が栽培されていた。そのようなことからも商人が数多く集結したのだろう。黒田町などを枝郷に従え、随分賑やかな町であっただろうことは町を歩くと容易に想像が付く。
 家並が立て込んでいることにより、旧街道が温存されたままバイパスが建設されたであろうことが地図を見ると推測される。市街地で古い町並がまとまって残っているのは松坂城址近くのごく一部に限られているにもかかわらず、郊外に位置するこの大黒田町に連続性の高い古い町並が残っていることは意外性に満ちており、また貴重なものである。保存を行うに十分価値のある町並だと思う。
 








訪問日:2010.10.11 TOP 町並INDEX